今年2月、神戸市のこども家庭センター(児童相談所)で夜間対応に当たっていた委託相談員が、未明に相談に訪れた小学6年生の女児を追い返していたことが発覚しました。
こども家庭センターは2005年以降、60代以上が中心のボランティア活動団体であるNPO法人に夜間・休日業務を委託していて、今回女児を追い返した相談員は、5年ほど対応に当たっていた60代後半の男性であることがわかりました。
相談員は「高校生に見え、冗談だと思った」
2月10日、午前3時半ごろにセンターを一人で訪れた女児は、インターホン越しに「家を追い出された」と訴えたところ、相談員の男性から警察へ相談するように言われ、年齢や名前も確認されなかったといいます。この日の当直に当たっていた相談員は、女児を追い返した理由について「高校生に見え、冗談だと思った」と話していて、インターホン越しのみの対応で済ませたのち、市の担当職員にも女児が訪れたことを伝えていませんでした。
JR神戸駅から地下街を5分ほど歩いて地上に出ると、大型商業施設「神戸ハーバーランドUmie」から道路を挟んで真向かいにある「神戸市こども家庭センター」。
神戸の中心街に位置するセンターの前は人の往来が多いとはいえ、深夜ともなると人はほとんど歩いていません。成人している女性ですらひとり歩きに不安を覚えます。
ここで助けを求めた女児は、追い返されたあと、一人で交番へ向かったといいます。
本来、マニュアルでは「来所者がいた場合は、すみやかに市職員に連絡する」と規定されており、今回の対応は明らかに不適切だと判断できます。
委託先の専門は、児童福祉ではなく高齢者コミュニティだった
ではなぜ、委託相談員は女児を追い返したのでしょうか。
日本子ども虐待防止学会に所属する、花園大学社会福祉学部の和田一郎教授は「委託元である市が、福祉に対する専門性を軽視している」と強く非難します。
「問題なのは、神戸市が『児童福祉』の知識や経験を有しないNPO法人に業務を委託してしまったことです。委託先のNPOは、そもそも高齢者同士のコミュニティを作ることを目的とした団体であり、専門家ではありません。
神戸市は、他の自治体に比べて福祉・教育の予算が多くありませんし、人員も少ないのです。にも関わらず、福祉の重要性を軽視して人員増加をせず、委託費でごまかしてきたことが今回の問題につながったのでしょう」