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「コロナ鬱」にならないための“究極のストレス・コントロール術” 潜水艦元艦長が指南

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 社会, ライフスタイル, ヘルス

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艦長が野菜のみじん切りをする職場

 さらに、ストレス対策として、私が艦長として最も大切にしていたことがあります。それは、乗員に「こんなことを言ったら叱責されるのでは……」という不安を感じさせず、自分で考え、自由に発言・行動できる状態を作ることです。集団の「心理的安全性」が確保されている状態をどう作るのか、を常に意識していました。

 軍隊というと、上官の命令が絶対で、厳しい規律でがんじがらめになっているというイメージを持つ人もいるかも知れません。しかし、現実の潜水艦は違います。むしろ、上官がトップダウンで締めつけることは非常に危険。乗員が一斉に同じ方向を向いてしまうと、ひとりひとりが自分の頭で考えなくなり、重大なミスにつながりかねません。地上ではトイレットペーパーの買い占めで済むかも知れませんが、潜水艦ではひとつ間違うだけで、即人命を左右する大事故が起こってしまいます。

“究極の閉鎖空間”ともいえる潜水艦では、どうやってストレスを解消するのか? ©️Getty

 つまり閉鎖空間だからこそ、何でも言い合える環境が大切なのです。階級意識が非常に希薄で上官にも自由に意見を進言し、艦長もそれに対して否定をしません。「了解」か「待て」というだけ。戦場では最後まで艦長が生きている保障はありませんから、誰もが「自分ならこの艦をどうするか」と考える必要があるのです。

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 艦の設計も、乗員同士のコミュニケーションが取りやすいよう作られています。士官室も、廊下沿いにあって、扉も開いていますから、行き来する下士官からも丸見えです。艦長の私が厨房に立ち寄ったら、「暇だったら手伝ってください!」と言われ、野菜のみじん切りを手伝ったこともありました。それほどフラットな関係でした。

 こうしたリーダーの形を「サーバント・リーダー」といいます。自らが先導するのではなく、召使いのように乗務員たちが自発的に行動できるように支えていくやり方は、組織が最終的に成果を出すうえでも大切なものです。

 閉鎖空間では、飛び交う情報にただ従ってしまうのではなく、自分の頭で考えて自分なりの意見を持ち、それを自由にコミュニケーションしていくことが欠かせません。