日本と違う「ポケットティッシュの使い方」
日本と比べて「咳エチケット」はほとんど変わらないのだが、違いを指摘するならば、ポケットティッシュの使い方だろう。フランス語でハンカチのことを「mouchoir(鼻をかむもの)」という。そのせいか、ポケットティッシュも厚手で、何回も使う人もいる。だからわざわざ「使い捨てティッシュ」と呼んで、ポスターでは使った後に「捨てましょう」と付け加えられている。
さらに、「マスクは健康な人の感染防止にならないため、使用しないように」と保健省が連日伝えている。ただし飛沫を防ぐことはできるので、病気の人や感染者と接触する医療関係者や、高齢者に感染させる恐れのある介護者は必ずマスクを使用するように言われている。平常時から、街中でマスクをしている人の割合は日本より圧倒的に小さいと思う。
「フランス人は分かっていない」という嘆き
それにしても、事態は急激に進むものだ。これまでは週単位で動いていたように見えたが、日単位、いまでは文字通り時々刻々に変化している。16日の演説で、マクロン大統領はフランス人の規律のなさをこう嘆いていた。
「木曜日(12日)、私は我が国を横断している衛生危機を喚起するために演説しました。その時、伝染病は遠いものだと思う人もいたでしょう。それは今や現実なのです」
3月12日、新型コロナのパニックが始まってから初めての演説で、マクロン大統領は「ここ100年で最大の衛生上の危機」だとして、保育園から大学まで当面休校、70歳以上は外出を控えるよう要請すると発表した。
それでも、翌朝パリの街に特別変わったことはなかったのだ。朝市では、数日後に控えた市町村選挙の第1回投票日に向けて、競って候補者たちのビラ配りが行われていた。
「フランス人は分かっていない」。“外出禁止令”が発表されることになる16日朝のニュースで、保健省のサロモン医政局長が官僚にしては珍しく怒っていた。
というのも、週末にフィリップ首相から重要な発表があった。14日土曜日の会見で、翌15日から行事と、カフェやレストラン、映画館などの営業を当面禁止すると発表したのだ。ところが、最後の時を過ごそうとかえって大勢の人々が集まってしまい、一部では大晦日のカウントダウンのような状況だったという(期間は4月15日まで、例外的に営業を認める施設として、食料品店や医薬品店、銀行、ガソリンスタンド、新聞や雑誌を販売するキオスクなどが挙げられた)。多くの人が公園や市場を訪れる様子も報じられていた。
サロモン医政局長は、新型コロナの感染を防ぐためには人と人が接触してはいけないのに、これでは全く効果がない、というのだ。