フランスでは、新型コロナウイルスの感染者が19日に1万人を超えた。死者は562人になった(3月22日時点)。

「我々は『戦争』のさなかにある。感染の拡大を遅らせるため犠牲を払ってほしい」

 3月16日月曜日、午後8時のゴールデンアワー。マクロン大統領は、翌17日正午からフランス全土にわたる“外出禁止令”を発表した。期間は少なくとも15日間。不必要な外出、いかなる人の集まりも禁止するとして、従わない場合は罰則が伴うことを強調した。今、パリの観光名所にも人の姿はほとんどないという。

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3月16日、国民に向けてテレビ演説するマクロン大統領 ©時事通信社

 マクロン大統領は、演説の中で「戦争」という言葉を6回発した。相手は目に見えない、至る所へ移動する敵である。

「一人も失業させない」、「大小問わず一つの企業も倒産させない」。年金をはじめとするマクロン大統領が掲げていた改革はすべて棚上げにされ、経営困難な企業は税金や社会保障費を免除。水道、ガス、電気代や家賃も猶予されるという。配給こそしないものの、完全に戦時経済に入った。

不適切な外出には罰金が科される

 16日夜11時、私の携帯にSMSが届いた。政府から送信されたものだった。

〈COVID-19警戒 共和国大統領は、ウイルスの拡散と戦い生命を救うため、厳密に遵守しなければならない規則を発表しました。外出は証明書を持参し、あなたの仕事、健康、基本的な買い物のためだけに許可されます。詳細はwww.gouvernement.frへ〉

「特例外出証明書」のひな型(フランス内務省HPより)

 外出するための証明書のひな形はウェブからダウンロードできる。例外的に外出が認められるためには、特例外出証明書を所持している必要がある。

 不所持や、不適切な外出は135ユーロ(約1万6000円)の罰金が科される。スマホの画面を見せるなど、電子データの表示では認められない。

3月16日、「待機ゾーン 1人出場=1人入場」と書かれた食料品店の看板。

 夜が明け、いよいよ外出禁止が始まる17日を迎えた。テレビには、郊外のスーパーへ開店と同時に駆け込む大勢の客の姿が映っている。ただ、パリ・バスチーユ界隈に暮らす私の実感として、大きな混乱は起こっていない。

3月17日、スーパーマーケット前の列。警備員の誘導で1人ずつ中に入る。

 現在フランスでは、新型コロナ対策として手洗いの励行など、次のような予防行動が呼びかけられている。

「きちんと手を洗う」、「咳やくしゃみをするときには腕またはハンカチ、ティッシュを当てる」、「使い捨てティッシュを使う」、「握手やハグをせずに挨拶する」。