「文藝春秋」3月号の特選記事を公開します。(初公開 2020年2月19日)
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昨年10月、「血液クレンジング(血液オゾン療法)」がネット上で大きな批判を浴びた。概して、腕などの静脈から血液を採取し、その血液にオゾンを混ぜ、点滴のように再び静脈から体内へ戻すことでがんや白血病、肝炎、糖尿病を改善し、さらにアンチエイジングや美容にも効果があるとする「治療」だが、科学的根拠(エビデンス)の確かなものではない。国からも保険適用の認められていない自費による自由診療だ。
ニセ医療情報をどう見分ければいいのか?
このような「治療」が一部のクリニックでは1回数万円で提供され、芸能人やタレントがその宣伝活動を行っていた現実がある。すなわち、「医療機関が提供しているから」「著名人が宣伝しているから」といっても、必ずしも効果があることを保証しないことが、あらためて浮き彫りになったと言えるだろう。
医療についての情報は命にかかわるものだ。一方で、インターネットが普及しきったこの時代、情報の量は爆発的に増えている。私たちはその中から、どのように「正しい」医療情報とそうでないものを見分けていけばいいのだろうか。ネットと医療情報の問題を追い続ける記者として、ニセ医療情報のスクリーニング方法を紹介する。
最初に言えることは、自分の体のことは一義的に、かかりつけの医師に相談するべきであるということ。ネットの医療情報はあくまでも一般論であり、「あなた」に当てはまるかどうかは、実際に診察をする医師でなければわからない。その意味で、ネットの医療情報はあくまでも補助的なものであり、それだけで完結するとは思わないでほしい。
「すぐに」「ラクに」「簡単に」「副作用がない」はNGワード
その上で、医療情報の信頼性を見極める簡易的なスクリーニング方法が「NGワード」だ。
例えば「すぐに」「ラクに」「簡単に」といった心理的ハードルを下げる言葉。人間の体は複雑であり、変化には少なからず苦労が伴う。それゆえに、このような言葉は本来は医療になじまないもの。使用されていたら、それだけで疑ってかかる必要があるだろう。
まさに問題になった血液クレンジングについて、あるクリニックでは「とても簡単です」「所要時間は約30分」などと説明していた。それでいて、がんやパーキンソン病の予防と治療、認知症改善にも効果があるとする。これほど都合のいい「治療」があるだろうか。この「治療」が科学的根拠に乏しいとされるゆえんである。