加えて、一部のクリニックは血液クレンジングを「副作用の心配はございません」などと説明している。しかし、医療は少なからず人の体を傷つける(侵襲的な)行為だ。手術がわかりやすいが、体にメスを入れるという大がかりな行為により、病変を取り除けるというリターンがある。まったく副作用がないなら、そもそも何の効果もないとも考えられる。
「最先端」との宣伝文句にも要注意!
他にも警戒するべき言葉がある。例えば「最先端」だ。医学において「進んでいること」「新しいこと」は必ずしも「最善」とは限らない。これらのフレーズは「十分に検証されていない」とも言い換えられる。「最先端の酸化療法(血液クレンジング)を提供」などという宣伝も、血液クレンジングを提供するクリニックのウェブサイトで確認できる。
ただし、厚生労働省が指定する「先進医療」という概念もあり、この場合は有効性に期待のかかる治療だ。「進んでいる」や「新しい」と表現しているのが誰なのか、ということも、あわせて確認する必要がある。多くの医師が身を削り、患者のために働く一方、約30万人のうちごく一部の医師に、職責にもとる行為があるのも事実だからだ。
このように、複数のフィルターを並行して活用し、できるだけ確からしい情報を入手すること――これが今、私たちに求められている、なかなかに難しい要求である。血液クレンジング一つを取っても、騙されかねないポイントは複数ある。もし、自分や大事な人が命の危機を迎え、判断力の低下した状態なら……。騙された人を笑うことはできないだろう。
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必要なのは、医療情報の信頼性を判断する基準をいくつか持っておくこと。「文藝春秋」3月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されている拙稿「血液クレンジングだけじゃない ネットの医療情報にご用心」では、血液クレンジングを題材に、より包括的にネットの医療情報を見分けられる「5W2H」などの方法を紹介しながら、ネットと医療情報の問題を掘り下げている。
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血液クレンジングだけじゃない ネットの医療情報にご用心
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