ドラッグストアからは、マスクや消毒液が姿を消して久しい。しかし、それは決して、一般社会だけの問題ではなく、病院など「診療の現場」でも、マスクなどの物資不足が深刻になっている。 

 感染拡大にともない、人工呼吸器やECMOなど、重症患者を治療する機器は今後足りるのか、という指摘も出始めた。現在の病院の状況、患者増加の状況について、感染症の専門家で、第一線で新型コロナウイルス感染者の治療に携わっている、国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那賢志医師に話を伺った。 (前後編の前編/後編を読む

※インタビューは3月21日(日)に行われました。掲載時の情報は25日(木)のものです。

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忽那賢志医師

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──先生が勤務されている国立国際医療研究センターでは、新型コロナウイルス感染症の患者さんは増えてきていますか。 

忽那医師(以下、忽那)最初は、チャーター機での帰国者が受診して、それからクルーズ船の患者さんが入院し、最近では、国内発生の患者さんが増えているところです。

 クルーズ船は高齢者が多く重症者の割合が高かったですが、国内発生の方は軽症が多く、軽症8割、重症2割、人工呼吸器装着となるのが5%程度です。新型コロナウイルス感染症は指定感染症なので、軽症・重症かかわらず原則入院対応となり、陽性になった患者さんは、現在、東京では全員入院しています。 

──東京都の、感染症指定医療機関(注:新型コロナウイルス感染症のような指定感染症や、法律で定められた一類・二類感染症の患者の入院治療を担当する病院として、厚生労働大臣や都道府県知事に指定された病院)のベッドは現在足りていますか。 

忽那  一時期はクルーズ船の患者さんたちでいっぱいになっていましたが、この2週間ほどはその患者さんたちが退院されたのでやや余裕が出ていました。しかし、ここ1週間では都内で急激に患者さんが増えている状況です。

(注:3月25日、都内で41人の感染が判明し過去最多の130人となり、指定医療機関のベッド数118を上回った。なお、東京都は23日、感染者の急増に備え、最大4000床整備すると発表している)

 今後、オーバーシュートといって、爆発的に患者さんが増える事態になると、病床が足りなくなることもあり得ます。現に、愛知や相模原では病床が足りずに自宅待機例が出ています。そうなった場合は、軽症の患者さんは家で待機をすることになると思いますが、自宅待機の場合の具体的な目安が必要になるでしょう。

 

──現在は、まだそういった目安が存在しないのですね。 

忽那 ええ、厚生労働省は、3月1日、自治体判断で自宅待機も可という文書を出していますが(※1)、具体的にどう自宅待機を進めるかについては曖昧です。

 現状、入院患者の場合はPCR検査が2回陰性になってはじめて退院できるという決まりになっていますが、自宅待機の場合、どれくらいで仕事に復帰できるのか、外出はどうするのかといった目安がない。オーバーシュートが起こり病床が足りなくなる前に策定する必要があり、既にそういう動きはありますが、厚生労働省には早めに策定を進めてもらいたいですね。 

病院がいま一番困っていること

──率直に言って、臨床の現場でいま最も困っていることは何ですか。 

忽那 マスクとガウンが、足りていないことです。病院によっては、マスクが一日一枚だけ、あるいは数日に一枚だけのようなことがあります。新型コロナウイルス患者さんを診察する場合、本来であればマスクやガウンは診察ごとに交換しなくてはなりません。