われわれの病院では、東京都から支給されたりして、まだそれが可能ですが、感染症指定医療機関でも、すでにそれができなくなっている病院が出てきています。そうすると、感染防御が出来ず、医療従事者の感染リスクが高くなり、自分たちの身を守れない状況で診療しなければならないとなると、医療従事者による診療拒否も起こりかねません。
マスクやガウンの支給は、患者が増える前になんとかしないと、大変なことになります。政府には、マスクの速やかな支給をお願いしたいです。
人工呼吸器はなぜ簡単に増やせないのか
──今後オーバーシュートがあった場合、人工呼吸器が足りなくなるかもしれないとの懸念もあがり始めています。 また、ここ数日で、人工呼吸器が足りないのであれば増産すれば良い、との意見がSNSを中心にあがっていると聞きます。
忽那 患者数の推移によっては足りなくなる可能性もあるでしょう(3月9日の日本集中治療医学会の資料では、全国の人工呼吸器は約22000台。※2を参照)。
人工呼吸器の管理には専門性が要求されます。人工呼吸器に精通した医療従事者の数は限られていますので、人工呼吸器の数が足りていれば良いという話でもありません。現時点では、感染の規模が医療のキャパシティを超えないようにオーバーシュートを抑えることが重要になります。
──同じく重症患者の治療に使われるECMOに関しては、重症患者さんを治療するのに十分な台数が確保されているのでしょうか。また、そもそもECMOとはどういった機器なのでしょうか。
忽那 ECMOとは、「体外式膜型人工肺」といって、血液を一旦体の外に出し、肺の代わりに血液を酸素化し、二酸化炭素を除去し、血液を体の中に戻してやることで、肺を休ませてやる機械で、一般的に、人工呼吸器と一緒に使います。
ECMOは、感染対策をきちんとしながら使用できる台数としては、全国に100台もないのではないかと思われます。もちろん、この台数は、感染対策ができれば、今後増えていく可能性はあります(3月9日の日本集中治療医学会の資料では、全国のECMOは1400台程度。そのうち約150台が使用中、新型コロナウイルス肺炎への使用は3月11日時点で全国累計23例、回復12例、治療中11例。※2・※3を参照)。
ECMOも人工呼吸器と同様に、機械の台数が足りればいいというわけではなく、ECMOの扱いに精通したスタッフが必要になります。