フェミニズムの側から見ると、この第二段階、つまり女性たちの連帯を描くけれども、男性キャラがあくまで助力者として保存される物語は、ある種の「男性に忖度したフェミニズム」を想起させるかもしれない。私たちは女同士で連帯しますが、男の役割も否定しませんよ。そういう、男の「お気持ち」は傷つけないフェミニズム。
第三段階:新しい女の連帯へ?
さて、第三段階、「新・女たちの連帯の物語」である。ここまでくればもう分かっていただけるだろうか。『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』がこれまでの女の連帯の物語と一線を画しているのは、この映画がもはや助力者としての男性キャラを必要としていないためだ。ハーレイとバーズ・オブ・プレイの連帯に、マックスやT-800のような「力仕事をする男の人」はもはや必要ない。それがこの映画の「痛快さ」の根源にある。
このように見てこそ、ハーレイ・クインを演じたマーゴット・ロビーが、セクハラをされる若いジャーナリストを演じた『スキャンダル』(2019年)は、『ハーレイ・クイン』とセットにして観るべき映画として立ち現れる。
FOXニュースの創立者ロジャー・エイルズのセクハラ(ちなみに彼によるマーゴット・ロビーへのセクハラのシーンは、『ハーレイ・クイン』でユアン・マクレガー演じる悪役ブラックマスクによる「セクハラ」の場面とそっくりである)を告発した女性たちの物語である『スキャンダル』は、#MeToo映画と呼ぶことができるだろう。そして、女たちによる、女たちのための連帯が#MeToo運動であるとするなら、『スキャンダル』と同様に『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』もまさにそのような意味での#MeToo映画なのだ。