明治末期の北海道を舞台にした冒険活劇マンガ『ゴールデンカムイ』。大人気を支える要因の1つに本格的なアイヌ文化の描写がある。本書は「アイヌ語監修者」として連載開始時から作品に関わってきた著者が、マンガのカットをふんだんに用いて書き下ろした公式解説本。アイヌ文化の入門書としても充実している。
「最近の新書企画は、決定的な入門書がない分野にヒットの芽があるといわれています。アイヌの物語や精神世界について詳しく、しかも読み易く解説した決定的な新書は、企画を立てた2016年頃はまだ見当たらなかったんです」(担当編集者の石戸谷奎さん)
たとえば「カムイ」という概念。「神」と訳されることが多いが、そう理解しては、アイヌの精神文化はわからない。動物や樹木、人工物も含め、人間の関わるものはすべて「カムイ」。クマは、毛皮と肉を土産に人間の世界に遊びに来た「カムイ」で、狩人の矢を“受け取る”と、それらを置いて元いた「カムイ」の世界へと帰る……。
「本書の編集を通じて知れば知るほど、アイヌの世界に魅力を感じました。巻末にブックガイドを掲載したのも、教養新書としての完成度を高め、その魅力をより深く伝えたかったからです。その成果か、あまりマンガを読まれないご高齢の方が、本書をきっかけに『ゴールデンカムイ』を手に取ることもあるそうで、ありがたいですね」(石戸谷さん)
2019年3月発売。初版2万部。現在6刷6万部