文春オンライン
知られざる「個人撮影AV」ブームの実態 “古株”制作者兼男優が打ち明けた

知られざる「個人撮影AV」ブームの実態 “古株”制作者兼男優が打ち明けた

投稿急増でトラブル相次ぐ

2020/03/28

source : 週刊文春デジタル

genre : ライフ, 社会, 娯楽

――「個撮」の撮影者たちが集まる機会はありますか?

「撮影者たちのグループができれば、モザイクや編集ノウハウの共有、女の子の募集の仕方についての情報交換などのニーズもあるはずです。過去数回、自分のツイッター上で『個人撮影者の飲み会をやっている』と告知し、オフ会を開いたことがあった。毎回、僕と同じ個撮をやっている人や、これから個撮を始めたい人たちが集まります。

 無修正は扱わない、あるサイトでは、いま個撮の作品を送っても配信されるまで2、3週間もかかるようになっています。投稿本数が増えてしまい、サイト側が行うモザイクの適切さなどのチェックが追いつかないからです。もし、自主グループの『統一モザイク基準』などが導入されれば、そういったサイトの負担は減るし、事前チェックを自主グループで担うこともできるのではないでしょうか」

ADVERTISEMENT

急増するトラブル「私的であっても性暴力」

 筆者は1年半前、とある集まりでA氏を知った。この間、折に触れメールでやりとりし、情報交換をしてきた。今回のインタビューは2時間を超えるものとなった。匿名とは言え、同業者や周囲に身元を知られるリスクはある。それでも「個撮」への強い思いから、A氏はリスク覚悟でインタビューに応じたのだという。

 とはいえ、撮影者のA氏に見えている「個撮」の世界は一部に過ぎない。

インタビューに応じるA氏(筆者撮影)

 AV出演強要やリベンジポルノなどの被害者支援に取り組むNPO法人「ポルノ被害と性暴力を考える会PAPS(ぱっぷす)」(東京)の金尻カズナ理事長は次のように話す。

「ここ1~2年、個撮や同人AV関係の相談は急速に増えています。相談内容は、モザイクありと言われたのに無修正で出された、ギャラの未払いのほか、そもそも動画に出ること自体を了承していないのに公開されたケースもある。

 例えば援助交際やパパ活のような形で出会い、ホテルで行為中の動画の撮影を求められる。『自分だけで見て楽しむから』『撮影フェチだから頼むよ』と言われ、少しお金を積み増され応じてしまう。そしてしばらく経った後、サイトに動画が出ているのを見つけた男友達に知らされ、驚くというパターン。また、単なるコスプレでの写真撮影だと女性を募集しておいて、ホテルという密室に入った途端、強圧的に行為の動画の撮影を迫られ、配信されたケースもありました。

モデル側からカメラマンを募集する掲示板もある

 被害女性の証言によると、悪質な撮影者にはAVメーカーの制作者や元制作者がいるという。DVD販売が落ち込むAV業界で食べられなくなった人たちが、個撮に流れてきているのです。スマホの動画撮影機能が向上したほか、高速通信化で動画をアップしやすくなり、視聴者もサイトを利用しやすくなった。個撮は今後も増え続けていくでしょう。

 AV出演強要問題は一時期ほど騒がれなくなっていますが、個撮にも舞台を広げて続いているというのが我々の認識です。私的であっても、性的行為の撮影を求められること自体が性暴力にあたるとの認識に立って、女性たちは慎重に撮影の諾否を判断して欲しい」

 同会が2019年に受けた相談は158件で、前年より25%増えているという。

知られざる「個人撮影AV」ブームの実態 “古株”制作者兼男優が打ち明けた

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー