――Aさんは、なぜ「個撮」を続けるのでしょうか。
「僕は撮影自体が好きですし、作品として発表するのも楽しいので個撮を続けています。女性人権団体からは理解されないでしょうが、私には個撮は自己表現です。だから、多くの撮影者が危ない橋を渡っている状態を改善したい気持ちを持っています。
個撮や同人AVは横のつながりがなく、ノウハウの共有ができていない。たとえば、モザイク。モザイク処理は、やはり一定のノウハウが必要です。現状では『モザイクの濃さをどの程度にすればいいのか』も、誰も教えてくれない。
僕は、AVメーカーらで構成するIPPA(知的財産振興協会)関連の審査団体に準ずる基準に合わせてモザイクをかけています。これが一番、摘発のリスクが低いと考えているからです。他の撮影者は、薄めのモザイク、いわゆる『薄モザ』や、ましてや無修正で出している」
どんなトラブルがあるのか?
――2月上旬、無修正動画をサイトに投稿したとして、30代の男性が逮捕される事件がありました。「個撮」の世界では、どんなトラブルがあるのでしょうか。
「その男性については、逮捕される2、3週間くらい前から『危険な撮影者』だとするツイッターの投稿が出回っていました。ガウン姿の彼自身の写真付きの投稿です。『顔はモザイクあり、と言われたのに無修正で映像を出された』『撮影代金を支払ってもらえない』などの内容が書き込まれていました。
個撮のトラブルは多いか少ないかは分かりませんが、モデルとなる女の子から愚痴や苦情を聞くことはあります。例えば、撮影代金のトラブル。『手持ちがないからお金を下ろしてくる』『モデル代金は振り込むから』と言った撮影者が、お金を渡さずにバックレてしまうんです。そして、顔や性器にモザイクをかけると言ったのに、かけなかったというケースもある。あとはコンドームをつける約束だったのに、しなかったという話も聞きます」
――逮捕された男性は、無修正動画の配信で3500万円もの売り上げがあったと報じられています。
「日本では、無修正動画は当然ながら違法で摘発されます。それが分かっていながら、若い世代は短期間で儲けようとして、摘発覚悟で無修正をやっているように見える。こうした状態が続けば、個撮は警察の摘発対象になってしまいます。私は自分が好きでやっている個撮が、『そうした趣味の人たちはいるよね』と、ある程度は世間で認められる存在であって欲しい。警察のやっかいにはなりたくないです」
――「個撮」は勢いがあると聞きますが、その要因は何だと思いますか?
「かつては撮影するとなると、それなりの機材が必要でしたが、今はiPhoneが一台あれば十分になったのが大きいのではないでしょうか。ビデオカメラの場合はデータが大きいので、編集前にPCでデータを小さくする必要もありますが、iPhoneならその必要もない。画質も、テレビでの視聴には耐えませんが、スマホでの視聴なら十分です。やろうと思えば、iPhoneだけで簡単な編集やモザイク処理までできる。画面が小さくて作業がしにくいなら、iPadを追加すれば十分です。
5Gも本格化してくるし、新規参入する撮影者が減ることはないでしょう。だからこそ、自主団体のような組織を作るべきなんです。グループへの登録制にすれば、撮影者の住所や連絡先が分かる。悪質な撮影者だけでなく、場合によってはモデル志望の女の子にも注意を与えたりできるはずです」