憧れの先輩に手紙をしたためる
下級生が先輩に恋をする……。これはJGに限った話ではない。雙葉でもそうなのだ。
英語演劇部に所属していた卒業生Dさんに部活動の様子を詳しく教えてもらった。
先輩後輩の上下関係がやはり厳しかったらしい。普段は全員仲良くやっているが、先輩に対しては相当に気を遣わなければならない。しっかり挨拶をするのは当然、その際には必ず敬語を使わなければならない。なお、演劇の公演が終了したら、部の習わしとして必ず先輩に対して「御礼状」を書かねばならない。先輩全員に書かなければならない決まりなので中1生はかなり大変になる。御礼状には「このたびの公演では先輩方にお世話になりまして……」といった文面になる。他にも、先輩より早い時間帯に朝練の場に顔を出さなくてはならない取り決めがあったとか。彼女は笑いながらこう付け加えた。
「部の儀式、いや、伝統芸として『2つ下の後輩を説教する場』がありました」
聞けば、後輩たちの態度が悪いときに説教したらしいが、別にそんな事実がなかったとしても、やはり説教タイムを設けていたらしい。
「後輩たちはしおらしくうつむいているのに、説教する側はついそんな後輩たちを見て笑いそうになっちゃうんです」
学年の終わりに先輩から靴紐やハチマキを譲り受ける
英語演劇部内でイジメは皆無だったとのこと。
そんな彼女にとって先輩は「こわいけれど、尊敬できる人」。
彼女は中1~中3にかけて、3つ年上の憧れの先輩がいたらしい。「そのとき、わたしは確かに恋をしていました」と語る。バレンタイン・デーにはその先輩に手作りのお菓子を渡したり、先輩の好きなキャラクターグッズをプレゼントしたりしていた。最後に先輩からお礼の手紙を受け取った時には、思わず号泣したとか。
別の卒業生Eさんはこう述懐する。
「周囲には先輩に本気で恋をする人がいました。雙葉の伝統として、学年の終わりにお目当ての先輩から靴紐やハチマキを譲り受けるんです」
演劇部でも、やはり御礼状の存在がある。
「演劇部は公演が終わると先輩に『便箋2枚以上』で御礼状を出さなければいけないという規定がありました。便箋の柄は控えめなものにするのが暗黙のルール。あと、自分が後輩に手紙を貰った時は必ず返信します。みんな、その手紙を読んで泣きます。普段は言えない本音が盛り込まれていたりするからです。みんなペンだこを作るくらい本当にたくさん書きましたね」
彼女はその経験は卒業後も役立っているという。
「卒業したいま、雙葉の演劇部の子たちの年賀状は総じて『筆まめ』です。わたしも多くの手紙を綴ってきたせいか、書くことには何の抵抗もありません」