昨年の4月12日、東京大学の入学式での上野千鶴子氏の祝辞が話題を呼んだ。
上野氏がその祝辞でも言及していたのが、東大の女子入学者数が全体の2割を越えないという事実だ(昨年度のデータによると約18%)。上野氏はこの一因として「女性の価値と成績のよさとのあいだには、ねじれがある」点を挙げていた。
東大女子比率の低さを跳ね返す桜蔭の躍進
しかし、今春2020年度の東京大学高校別合格者数を見ると、その合格者数において大躍進を遂げた私立中高一貫校の女子校がある。東京都文京区にある「桜蔭」(おういん)だ。東大合格者数は開成、筑波大学付属駒場につづく全国第3位の85名。これは桜蔭の過去最高数であり、昨年66名(第7位)からの大躍進だ。ちなみに、桜蔭につづく女子校は東京都千代田区にある女子学院の33名(第17位)である。桜蔭は女子校のなかでは進学校として別格の存在感を放っている。
わたしは4年半前に『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)という本を上梓した。この本をベースにして、桜蔭の進学校としての凄さの秘密に迫りたい。
「桜蔭は日本一の学校なんだ」
確かに今春桜蔭は東大合格者数で躍進したが、桜蔭の進学校としての実力は長い歴史を誇る。1994年度以来実に27年にわたって東京大学高校別合格者数で全国ベスト10入りを果たしているのだ。
この点に憧れて桜蔭を志望する中学受験生が当然多い。
東京大学教養学部文科3類1年生(取材当時、以下同)のAさんは、親の一言で受験を決めたという。彼女の父親は大学教授だ。
「中学受験は親が決めました。いろいろな学校に見学に行きましたが、『桜蔭は日本一の学校なんだよ』なんて親に言われてその気になったのです(笑)」