学力の上下差など気にしない桜蔭の気風
このように桜蔭を紹介していくと、さぞかし「勉強オタク」の女子ばかり結集しているように思ってしまう。実際どうなのだろう。
東京医科歯科大学医学部1年生のHさんは、中高生活をこう振り返る。
「わが道を行くタイプの人が多かったですね。他人を気にしないドライな性格の子がほとんどだと思います。クラス内で何となくグループはできるけれど、それも流動的。たとえば、ディズニーランドに遊びに行ったときも『○○ちゃんも行きたいって言っているよ』と普段グループに属していない子であっても気軽に加われる雰囲気がありました。中1の頃は友だちの悪口をこそこそ言う子もいましたが、すぐにみんな丸くなります(笑)」
これは彼女の代に限った話ではなさそうだ。
彼女の2つ年上の卒業生3人に桜蔭内での友人関係を聞いてみた。
「クラス内は自然と幾つかのグループに分かれますが、正直はっきりとしない感じです。帰宅するときも、グループ内でというよりも、自宅の方向が同じ人と途中まで帰りますね」
「トイレに行くときは基本ひとりで、誰かが付いてくるなんてことはありません。下校時は駅くらいまでは一緒に帰るけれど……という人が何人かいました」
「いつも一緒にベタベタする……というような雰囲気はありません。帰宅前に話があんまり弾まないときは、ひとりで帰りました」
同調圧力など無縁の学校生活を送っていたことが分かる。
勉強が出来ることは「当たり前」
また、桜蔭の卒業生に取材をしていると共通していたのが、桜蔭内では勉強面で順位を争うことなどないという点だ。成績優秀者の掲示や公開も学校側ではまったくおこなっていない。卒業生が証言するところによると、クラス内で数人授業に付いていくのに苦しんでいた子がいたらしいが、勉強ができないことが原因で仲間外れになるような雰囲気は桜蔭には一切ない。
「勉強至上主義」であると勘違いされやすい桜蔭生ではあるが、そもそもトップレベルの学力を備えている在校生にとって、勉強の出来不出来で人を評価するなど下らないことだと考えているのだろう。つまり、勉強が出来ることは「当たり前」であり、それで優位に立とうなんていう思いはないのである。
この桜蔭に加え、女子学院、雙葉の3校を合わせて「女子御三家」と呼ぶ。
それぞれ伝統のある女子進学校ではあるが、その校風や生徒たちの雰囲気は三者三様である。
ご興味のある方は拙著『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』をぜひ手に取ってほしい。