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「塾通いは中1時点で3割くらい。高校生になってから半数を超えるくらいでしょうか。高3時はほとんどが通っていると思います。でも、わたしが知る範囲で言いますと、塾通いを一切せずに東京医科歯科大学医学部に現役合格した友人もいます。また、高3になって『添削』と『自習室利用』が主たる目的で予備校に形だけ籍を置いていた子は、現役で東京大学理3に合格しています。塾の力を借りなくても、学校だけで大学受験は対応できるということですね。あと、『桜蔭の授業レベルが高すぎてなかなか消化できないため、それを補うために塾を活用する』という人もいますよ」

 こう聞くと、通塾率は他の私立中高一貫校と大差がなさそうである。いや、むしろ、低い部類に入るかもしれない。

©︎iStock.com

桜蔭の授業を見学してみたら……

 わたしは『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』を執筆する際、桜蔭の協力を得て授業を見学させてもらったことがある。以下はそのときの様子と、桜蔭の授業を振り返る卒業生たちの弁である。

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 わたしを校内へと案内してくれる先生の歩みが突然ゆっくりになる。音を立てないように気を配っているようだ。先生が小声で囁く。

「高3の数学の授業です」

 見ると、何人かの生徒たちが一心不乱に何かの数式を黒板に書き殴っている。座っている生徒たちはこちらの存在にまったく気付かない。心を決して散らすことなく、黒板に書かれた数式を皆黙々とノートに写しているのだ。殺伐とした……という表現を思わず使いたくなるほどの凄みが感じられる空間であった。なお、教室には黒板が前方だけでなく、横にも取り付けられていて、それらをフル活用した授業がおこなわれることもある。

 前出の東京大学理学部3年生・Bさんは、この数学の授業の様子を説明してくれた。

「数学のレベルは相当高いです。授業が始まるまでに事前に指名された生徒たちがそれぞれに課された問題の解答過程を黒板に書きつけておくんです。で、先生が入ってくると、すぐにその解説がスタートします。付いていくのにもう必死ですよ」

 東大、それも理系学部に現役合格している彼女がこう言うのである。

©︎矢野耕平

生徒の学びを喚起しようと……

 レベルが高いのは数学だけではない。慶應義塾大学に通うEさんは、地理と日本史の授業が奥深くて生徒間では評判だったという。

 東京大学の理系学部に通うFさんは、生物の授業のレベルが特に高いと感じたとか。

「実験はあまりおこないませんが、板書が細かくて、相当難しい内容に踏み込みます」

 トップクラスの生徒ばかりが集まる桜蔭だからこそ、生徒の学びを喚起しようと知らず知らずのうちに高度な授業が完成するのかもしれない。もちろん、教員にはその分確かなバックグラウンド、知識量が必要になることは言うまでもない。