わたしは4年半前に『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)という本を上梓した。そのときに取材した27歳のJG卒業生にこのエピソードを話したところ、「それ、すっごく分かります」と笑う。
そう。この先輩と後輩の関係性は脈々と受け継がれている。拙著の一部を紹介しよう。
女子校では性別が“消滅”する
取材当時、お茶の水女子大学を休学していた卒業生Aさんは、「いま思い返すと、JGの上下関係の厳しさって何だったんだろう」と首をかしげる。そしてこう続けた。
「大学の好きな先輩とは『一緒にカフェに行きたい』って感じで距離が近いような気がしますが、JG時代の先輩は『近くでは先輩が眩しくて見られません』(笑)という思いを抱いていましたね」
ある卒業生はその厳しさゆえに体調を崩すことさえあったらしい。
「先輩後輩の関係はものすごく厳しかったですよ。もうこわくて……。部活前はお腹痛くて気持ち悪い、みたいな(笑)。ある意味、古風な雰囲気でしたね。無駄に厳しくて(笑)。中2と中3が中1を指導するんですね。だから、自分が中3になったときには後輩にやっぱり厳しくなりました(笑)」
JGでは先輩と後輩の「線引き」がはっきりとしている。だから、なのだろう。JG生の多くは「先輩に恋をした」という経験を持っている。そういえば、JGの卒業生たちが異口同音に「中高時代は性別が“消滅”していた」と語っていた。ここは実に興味深いところだ。
若い男性教員には手厳しい
管弦楽班に属していた卒業生Bさんは振り返る。
「管弦楽班に入るとき、希望の楽器を3つ書かなければいけなかったんですね。見学の際に出会ったチェロの先輩が格好良すぎて『チェロ』って書いたら、その夢が叶ったんです。で、その先輩が引退するときにご飯をみんなで作って持ち寄ったんですよ。そしたら、帰り際にその先輩から『あなたが作った料理美味しかったよ』って言われて、ただただ嬉しくて泣き崩れました(笑)」
彼女は「恋愛感情」に近い感覚をそのとき確かに持っていたという。
硬式テニス班出身の卒業生Cさんも言う。
「硬テ班にはプレーヤー兼マネージャーみたいな人がいて、わたしはその人に憧れていましたね。わたしがつまずいたときに走ってきてくれて怪我を治療してくれて…そのときに胸がキュンとなりました(笑)」
JGはかように長幼の序を重んじる学校だ……と書きかけて留まった。
この手の話はあくまでも在校生の先輩に対してのもの。教員に対しては比較的フレンドリーな関係であり、卒業生によると特に若い男性教員には手厳しいという。拙著の取材時、そのときの様子を聞いてみた。教える身としてJGはなかなか恐ろしい授業空間である……。
「JG生はみんな強いので酷かったですよ(笑)。若い男の先生が授業で『起立!』と号令かけても誰ひとり立たなかったり……。で、先生が怒るとみんな大爆笑みたいな(笑)」