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硬直化したカレー業界を壊したい

小宮山 僕はもうぶっちゃけ、カレー本は出さないと思いますね。

水野 だめだよ。カレー王なんだからどんどん出せばいいんだよ。

小宮山 いやいや(笑)。

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小宮山さん自作の「蔦風スパイシーカレー」

水野 僕はいろんな業界の人にどんどんカレー本を出してほしいんですよね。カレー業界っていうもの自体も破壊してほしいわけですよ。僕も破壊しようと思ってるんだけど、やっぱり外の業界にいる人が破壊してくれるのが一番いいわけだから。

小宮山 水野君は、『いちばんおいしい家カレーをつくる』(プレジデント社)の帯に「ファイナルカレー」って書いてるけど、まだいくらでも書けそうだよね。

水野 僕はまだ、あと100冊ぐらい書きたいものがありますね。この「ファイナルカレー」っていうのはキャッチーだけれども、僕の中のカレーのおいしい作り方としては、ここに書いている内容自体は本当にほんの一部だから。ただ、僕はレシピ本だけでなく読み物のほうも読んでもらいたい。カレーの世界はレシピ本しか売れないから、毎年レシピ本だけがバンバン出ていくんですけど。今年出す新書とルポを、とにかく読んでほしいんですよね。

カレーの世界をかき乱してくれそうな注目の店

小宮山 今、注目しているカレー屋さんはある?

水野 食べ歩きをしないので、カレー屋さんで注目してる人はあんまりいないかもしれないけど、この人、カレーの世界をかき乱してくれそうだな、って期待をしてる人は一人いる。(世田谷区)喜多見にあるジビエのカレーを出す店「ビートイート」の店主の竹林久仁子さん。竹林さんは女性なんだけど狩猟免許を持っていて、シカやイノシシを自分で獲って、カレーにして出すんです。彼女が面白いのは、大阪のイベントで知り合った時に「あさってからパリとロンドンに行くんですが、お勧めのカレー屋さん、知りませんか?」って聞かれて(笑)。インドじゃないんだって思ったんだけど「インドも何回か行ったんですけど、あんまり私の求めるものはなかったんです」って。面白い人が出てきたぞと。小宮山君は?

小宮山 代官山に「Ata/アタ」っていう魚介系のすごいおいしいビストロがあって、そこが恵比寿に出した「グッドラックカリー」も面白かった。話を聞いたら、ブイヨンとかビスクとか、全部フレンチの概念がベースにある。しかも2時からはカレーパンも作ってて、その日のカレーを入れるから、それによって揚げた後に外側にかけるスパイスも変える。僕が行った時はビスクだったんだけど、シナモンとか甘いような感じのものがかかってた。だから、明らかに発想として全然インドのほうではなくて。

水野 そういうの、面白いね。