ポテンシャルが感じられる“チャイニーズカレー”
水野 それで思い出したけど、今、カレーの世界でこれからもっとガッツリ盛り上げていきたいと思ってるのは、チャイニーズカレーなんですよ。いわゆる中華料理屋のカレーで、今までプレーヤー不在だったんだけど、今、自分の中で超再注目している。なんでかというと、僕は基本的に、全国の家庭で一般の人が再現できるカレーに興味があるんですよね。その意味で一番可能性を感じているのが、チャイニーズカレーなんです。あれは白湯スープ的な、要するに濃厚な出汁さえあれば、10分もかからないで作れるんですよ。玉ねぎと豚肉とかを適当に炒めて、カレー粉をバッと入れて、それを白湯スープとか醤油とか塩とかで伸ばして、水溶き片栗粉を入れるだけだから。白湯スープのところさえ何とかなれば、チャイニーズカレーはほんと簡単にできる。しかも、別にそのカレーは中国にあるわけじゃなく、日本の中華料理屋で生まれたカレーだから。これに僕はすごいポテンシャルを感じる。
小宮山 そういう意味で言うと、いわゆる「チャイニーズカレー」ではないんですけど、友人たちと山形に旅行に行った時に、住宅街にポツンとある、行列ができてる中華料理屋があって。そこに、「カレーかけご飯」っていうメニューがあって。
水野 ああ、いいね。
小宮山 それとは別にカレーチャーハンはあるんですけど、カレーライスはないの。一応頼んでみたら、カレー味の野菜肉炒めみたいなものにちょっととろみがついているんだけど、食べたことがないもので。カレー味の野菜炒めでもないし、食べるとカレーライスでもあるんだけど、確かにこれはカレーかけご飯だなと。それこそ六本木「香妃園」みたいに明確な、われわれが抱くチャイニーズカレーのイメージとも違って、面白いなと思って。
水野 やっぱり「ここからここまでがカレー」の垣根が、今取り払われてる。その流れがどんどん加速するといいよね。
小宮山 ほんとにそうですね。
水野 最後に、小宮山君にとってカレーってなんですか?(笑)
小宮山 やっぱり小宇宙じゃない? 神3を使った小宇宙(笑)。
水野 僕は中宇宙ぐらいかな、小宮山君が小宇宙だったら。もうちょっと広い。
小宮山 まあちょっと広いだろうね。やっぱりね。
◆ ◆ ◆ ◆
水野仁輔(みずのじんすけ)/1974年静岡県出身。1999年に出張料理集団「東京カリ〜番長」を結成。これまで出版してきたカレー本は40冊以上。2016年春、本格カレーが作れるスパイスセットを毎月届けるサービス「AIR SPICE」をスタートした。
小宮山雄飛(こみやまゆうひ)/1973年東京都出身。ホフディランのVo&Key担当。ミュージシャンのかたわらグルメにも精通し、雑誌連載やカレーレシピ本出版など食のシーンでも活躍。地元渋谷区の観光大使も勤め、食に渋谷に音楽に、 POPな日々を送っている。
撮影/末永裕樹(文藝春秋)