日本版もあり、日本でも注目を集める『ミシュランガイド』によるレストランの格付け。『ミシュランガイド』は約30カ国で刊行されているが、実は、本場『フランス版』の評価は別格で、恐ろしいほど厳しい。同じ「ミシュランの3つ星」でも、『日本版』や『ニューヨーク版』のそれとはまったく重みが違うのだ。
その「最も格式の高い3つ星」を、今年、パリのレストラン「KEI」のオーナーシェフ、小林圭氏(42)が獲得した。日本人初の快挙だ。ミシュランは「風味の真の名人。正確で綿密、美を追求している」と絶賛している。
料理人として世界最高峰に登り詰めた小林氏。だが、フレンチシェフを目指したそもそものきっかけは、意外なほど素朴なものだった。
「15歳から19歳まで、一生分くらい怒られた」
〈15歳の時のことです。テレビで3つ星シェフだったアラン・シャペル氏のドキュメンタリーを見て、白の上着、黒いズボン、白い前掛け姿のかっこよさに一目で魅せられて、「自分もシェフになりたい!」と思ったんです。
とはいえ、(地元の方には申し訳ないのですが)長野育ちですから、ちゃんとしたフレンチなど食べたことがない。ですから、何も知らずにこの世界に飛び込んだんです〉
きっかけは、こんなに“シンプル”だが、圧倒されるのは、その“行動力”だ。
〈すぐに行動に移しました。まず押しかけたのは、長野の「東急ハーヴェストクラブ蓼科」という会員制ホテル。数年前に亡くなられた中村徳宏シェフは、フランスに憧れ、フランス人と一緒に仕事をした経験もあり、フランスのコンクールにも参加していました。
シェフから叩き込まれたのは、「基礎を学ぶ大切さ」。人との接し方、目上の人との接し方、料理に対する姿勢など、「料理人」である以前に「一人の人間」としての心構えから教えていただきました。15歳から19歳まで、本当に一生分くらい怒られた(笑)〉