なぜ臆面もなく“優しい志村”を出したのか
そして、志村の新型コロナ陽性と入院が発表された3月25日。どうしても気になって『あいつ今何してる?』(テレビ朝日系)を見た。現在の動向が気になる人物として志村が挙げたのは、結婚まで考えていた元恋人。彼女を選んだ理由を「今は幸せですか?」と聞いてみたいからと語り、「結婚して上手くいってれば、それが一番良いかな」と続けた。
かねてから良い人オーラを放ってはいたものの、ここまで臆面もなく“優しい志村”を出すのは少し意外な気がした。結局、番組を見て笑わされるのではなく、なんだか癒やされた。この番組が生前最後のテレビ出演になった。こうしてプライベートを語るだけでなく、朝ドラ『エール』の出演、山田洋次とタッグを組むも幻となってしまった『キネマの神様』の主演も含め、志村が新たなフェーズへと移行しているのをひしひしと感じた。そして、そんな志村も悪くないと受け止める俺もいた。だからこそ、今回のことが悲しくてたまらない。
3月31日。どうしても家にじっとしていることができず、チャリンコを飛ばして東村山駅東口のロータリーに設置された献花台に向かった。俺みたいなオッサンもいれば、爺さん、婆さん、スーツ姿の人、親子連れ、若い子たち、まさに老若男女が手を合わせ、花を供え、酒を献じていた。それぞれにそれぞれの“志村”がいるのだろうと思いながら手を合わせていたら、ジワ~ッと涙が出てきた。チャリンコを飛ばして家に帰り、2歳半になる息子の歯を磨こうとしたら「アイーン」と顎を突き出してきた。志村はいなくなったが、こうやって受け継がれていくのだと確信した。