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歯をあきらめることは、人生をあきらめること

 すでに触れた通り、オーラルフレイルの段階で的確な医療介入をすれば、進行を食い止められる可能性はある。具体的にどうすればいいのか。

「いろいろなものを食べられるようにすることに尽きます。硬いものでも食べられるようにするにはあごの力を強化する必要があるが、そのためには“歯”がなければならない。義歯で食べられるなら義歯でいいし、それでは難しいならインプラント治療も選択肢の一つになるでしょう」

 もちろん、「食べる」以外にも、歯の治療をすることで滑舌がよくなれば社会との接点が広がるので、認知機能の低下予防にもつながる。「年だから……」と歯をあきらめることは、人生をあきらめることでもあるのだ。

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「口」と「手」の機能を正常に保つことが健康につながる

「ペンフィールドのマップ」をご存じだろうか。

 大脳皮質と全身の関連性を図案化したものだが、これを見ると人間の脳がいかに「口」と「手」を重視しているかがわかる。言い換えれば、「口」と「手」の機能を正常に保つことが脳の活性を高め、認知機能の維持につながる、ということが理解できる。

ペンフィールドのマップ

 ちなみに筆者(54)は最近、「滑舌の悪さ」を自覚している。そもそも「かつぜつ」と言いにくい。

 思えば食事中によくぼろぼろと食べこぼしているような気もしてきた。お茶やコーヒーでむせることは日常茶飯事だ。自分の書く原稿で不安になるほど切ない話もないのだが、決して安心はできない、というのが本音だ。

 幸いにして「自分の歯」はいまのところ豊富にある。

 できればフレイルやサルコペニアにはなりたくないので、せっせと歯科検診に通い、口の中のメンテナンスに力を入れつつ、社会との接点を小さくしないように努力しようと思います。