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【疑問】なぜこんなにカメラ機能が強化されたのか?

 ただしそもそもの問題として、iPadを所有していても、カメラ機能は一度も使ったことがない人も多いはず。筆者自身、日常の写真撮影はiPhoneや他のスマホ(Pixel)任せで、外出先でiPadを使って写真を撮った経験は、ほぼ皆無です。おそらく多くの人がそうではないでしょうか。

 こうした状況にもかかわらずカメラを強化してきたのは、AR(拡張現実)への対応をより進めるためだと考えられます。例えば、画面上に家具をAR表示し、実際の部屋に合うように配置をシミュレートするには、室内を広く映せる超広角レンズが不可欠です。こう考えると、超広角レンズを追加しながら、望遠レンズの搭載を見送ったのも理解できます。

 また今回のモデルでは「LiDAR」という距離センサーが新しく追加されています。これを使えば、被写体の面構成を正確にスキャンし、そこにオブジェクトを投影できます。対応アプリはまだまだこれからですが、それらを活用するためのハードウェアを、先行して投入してきたということでしょう。

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AR対応アプリを使えば、実際には存在しないCGの家具を実際の室内に投影し、配置などをシミュレートできます。従来に比べると描画が高速化されています
LiDARスキャナを使うことで、被写体の面構成を正確に読み取れます。この写真では、中心にある円マークが柱の面を読み取り、柱に貼り付いたような状態で歪んで表示されます
カメラを動かして円マークを横にスライドさせると、柱の面に合わせて円マークの歪み方が変化します。ちなみにこの円は、近づけば大きく、遠ざかると小さくなります

 とはいえこのLiDARスキャナは、昨年発表されたiPhone 11の超広角カメラやナイトモードのように、購入直後からバンバン使いまくり、ライフスタイルまで変えてしまうほどの効果は期待できません。少なくとも、この機能のために買い替えるという選択肢は、アプリ開発者でもない限りなさそうです。

パフォーマンス向上はごくわずかでも「テキスト変換」がスゴい

 では、その他のハードウェアはどのくらい進化しているのでしょうか。まずCPUについては、従来の「A12X」から「A12Z」に置き換わっていますが、ベンチマークソフトで計測しても、パフォーマンスの違いは1割あるかないかというレベルです。こちらもやはり、買い替えの理由にはならなさそうです。

 一方、従来ほぼすべてのモデルが4GBだったメモリ容量は、6GBへと増量されたため、マルチタスクでの作業がより快適になることが期待できます。実はこれまで、12.9インチモデルの容量1TBのみメモリが6GBだったのですが、「少しでもメモリは多いほうがよい」という理由で、このモデルを選ぶ必要はなくなったことになります。

 さらに、高速化が見込めるのがWi-Fiです。従来の11acから最新の11ax(Wi-Fi 6)へと進化したため、Wi-Fi 6対応の無線ルーターと組み合わせ、より高速にデータを転送できるようになりました。そのため、従来モデルでは途切れ途切れになっていたストリーミング動画も、スムーズに再生できるようになります。人によっては十分に買い替える理由になるでしょう。

続々と登場しつつある11ax(Wi-Fi 6)対応のルーターと組み合わせることで通信を高速化できます

 さらに地味ながら大きく進化したのが、テキスト変換です。本製品に併せてリリースされたiOS 13.4では、macOSですでに搭載済みの「ライブ変換」に対応したことで、日本語入力が大幅に効率化されました。

 具体的には、変換キーを押さなくとも文節ごとに自動的に漢字変換が行えるようになりました。このライブ変換では、漢字の変換候補が従来のような横方向にではなく、macOSやWindowsと同じく縦に並ぶため、感覚的な不自然さも解消されています。またTabキーで候補を選択できるようになったのも、操作性の共通化という意味で、歓迎すべきポイントです。

従来(右)は、変換候補が横に並ぶという、macOSユーザにもWindowsユーザにも違和感のある配置だったのが、新しいiOS 13.4(左)では一般的な縦表示に改められ、上下キーやTabキーで選択可能になりました(ライブ変換がオンの場合のみ)