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特集新入社員へのメッセージ

自分の仕事が大嫌いになったとき、私が行った「密かな反逆」

自分の仕事が大嫌いになったとき、私が行った「密かな反逆」

「新入社員へのメッセージ」として

2020/04/09
note

「密かな反逆」がムーブメントに

 私は運が良かったのか、反逆を続けながらも契約件数を落とすことはありませんでした。

 安易に任意整理は勧めない代わりに、返済が深刻で生活を圧迫しているケースであれば、「カードが使えなくなると困る」と渋っている相談者としっかり話し合い、最終的には「吉川さんがそう言うなら」と信頼して任せてもらえることが多かったためです。

 さらにそれが功を奏して、100人近くいる社員の中でトップの成績を走り続けた私は「契約の取り方」に説得力を持ちはじめ、他の社員の見本となって「内部工作」までできるようになったのです。

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©iStock.com

 一人きりで中指を立て続けていた私にとって、これは願ってもないことでした。

 腐敗したと思っていた組織がほんの少しでも変わっていくのを目の当たりにできた経験は、これからの仕事人生において大きな財産になると思っています。無力感やままならなさを抱えたとき、自分に「成功体験」がなければ「どうせ自分が何をやっても変わらないだろう」と何かに一生懸命になれることもなく、まるで根無し草のような人間になっていたかもしれません。

 今はその司法書士事務所を退職し、文章を書くことを生業にしています。社会問題についての取材や論考などを文章にして世間に発信し、それが誰かにとっての「気付き」になったり、そうした「気付き」が積もって小さなムーブメントを起こすことを期待しています。

新社会人のみなさん、おめでとうございます

 この春から、社会人として新しい生活をスタートさせた方もたくさんいるかと思います。おめでとうございます。

 これから関わる仕事には辛いこともあるかもしれませんし、思い描いていた理想とはかけ離れた現実が待っているかもしれません。それでも私たちは一人ひとり、計り知れない力を有しています。その力はたくさん集まれば集まるほど影響力が大きくなりますが、たった一人の力でも何かを変えられるほどに大きいものです。

 あなたが困難に立ち向かったとき、その力を「何もしないこと」に使うか、もしくは「何かを変えようとすること」に使うかで結果は大きく変わるかもしれません。

 もしも自分の仕事が嫌いになったとき、誇りを持てなくなったとき、ほんの少しだけ立ち止まって「小さな反逆」を考えてみませんか。

自分の仕事が大嫌いになったとき、私が行った「密かな反逆」

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