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中国からの“売り込み”でマスク輸入を始めた男性

 冒頭の男性の本業は、客の荷を輸送する国際物流サービス。世界各国で広がるコロナ自粛で国際物流が滞り、3月の売り上げは半減した。輸送を請け負ってきた男性が自身でマスクの輸入をはじめたのは、中国からの“売り込み”がきっかけだったという。 

「長年取引しているシンセン(深圳)の物流エージェントが、“マスクが手に入る”と連絡してきました。取引のある上海など他のエージェントに聞くと、同じように“マスクは手に入る”との回答でした。 

 彼らが提示してきたマスクは、買い値で1箱(50枚入り)1500円だけど粗悪品だったり、中国人が使う青色マスクで日本人に馴染まなかったりと様々でしたが、中に割高でも品質の高い白色マスクがあり、輸入を決めました」(男性) 

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男性が輸入したマスク。品質は問題ない(著者提供)

 買い値は1箱3000円弱。これにエアー(航空便)の輸送コストと4・7%の関税がかかり、三千数百円で企業に納入している。 

「中国のマスク工場が一部横流し」輸入のカラクリ

 輸入できるカラクリをこう話す。 

「中国政府がマスクを買い上げはじめましたが、マスク工場は、一部を横流ししているのです。工場には政府の監視員が常駐しているため、“夜に運び出す”と言っていました。エージェントはこうしたマスクを手に入れて輸出する。大量に準備するのは難しく、アメリカの有名小売りチェーンが取引を求めてきた時は断ったと言っていました」(同) 

 それでも1回数十万枚程度は輸出できるという。 

男性が輸入したマスク。その数はダンボール23箱、マスク約7万枚にのぼる(著者提供)

「エージェントに先に現金払いするため、小規模事業者の私には代金を回収できるか不安です。500万円以上突っ込んだ時はヒヤヒヤしました。今後、マスクが大量供給されて価格が暴落するかもしれないし、緊急事態宣言で外出自粛が徹底されれば、需要が減るかもしれません。リスクを考え、状況を見ながら1回5万枚程度をメドに輸入を続けるつもりです」(同) 

 3月末以降、男性は何回かに分けて十数万枚を輸入して数社に納入した。男性自身はマスク1枚につき10円の利益を乗せて現時点で百数十万円の利益だ。