「先週、中国から5万枚のマスクを輸入して、都内の企業に納入しました」 

 3月後半からマスクの輸入をはじめたという40代の男性はこう話す。 

 国内の深刻なマスク不足に対し、安倍首相は3月28日の会見で以下のように述べた。 

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「マスクは8割近くを中国での生産に依存して来ましたが、国内でマスクを作ってくれる企業に補助金を出してお願いしながら、生産増強と輸入の増加によって、4月は7億枚を超える供給を行います」 

マスクが店頭から消えた真の理由

 2018年度のマスク供給数は国内生産11億1100万枚、輸入は44億2700万枚に上る(日本衛生材料工業連合会)。合わせて1カ月4億6000万枚の供給数に比べて7億枚は確かに大幅増だが、4月に入っても薬局チェーンやスーパーの店頭でマスクは消えたままだ。 

東京都のドラッグストアの様子 ©時事通信社

 原因は中国政府の介入にもあったという。 

「中国から輸入してきたマスクの多くは、日本のメーカーが仕様を決めて中国の契約工場に生産を発注し、輸入して自社ブランドとして販売してきたものです。しかし中国でコロナ禍が起きると、中国政府は“緊急”を理由に工場に対して日本メーカーへの出荷を止めさせたのです」(業界関係者) 

 そして中国産マスクは中国政府の支配下に置かれつつある。 

「その後中国政府は、中国で生産されるマスクを高品質なものから買い上げはじめました。マスク着用をはじめた欧米各国が中国産マスクを求めてくると争奪戦がさらに激しくなり、不織布の価格が高騰し、マスクの紐まで足りなくなっている。今後、中国政府はマスク工場を完全管理下に置くという憶測も出ています」(同) 

 欧州で感染者が急増した後、中国政府は“支援”を名目に欧州各国にマスクを提供したが、問題も起きた。 

「中国政府が買い上げて贈ったマスクの中に粗悪品が多く混じっていたのです。メンツが潰れた習近平国家主席は激怒したと言われ、政府は工場に品質検査を厳しく求め、出荷までさらに時間がかかるようになりました」(同) 

 中国政府がマスクを管理下に置けばマスクの輸入は政府間交渉になり、外交力が問われることになる。