昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

続出する“コロナ解雇” 「辞めろ」と言われたとき冷静に対処するための知識

退職届のサインを求められても安易に応じてはいけない

2020/04/10

合理的理由のない解雇は撤回できる

 解雇とは、会社が一方的に労働契約を解約することをいう。「一方的に」というところがポイントで、要するに、労働者の同意を得ることなく契約を終了させるということだ。同意していないのに一方的に契約を切られるというのは、労働者からみれば非常に理不尽なことだから、余程の事情がないとできない。法律では、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」解雇は、権利を濫用したものとして無効とする旨が定められている(労働契約法16条)。

©iStock.com

 コロナの影響によって経営状況が悪化した場合などでも、それは同じだ。経営上の理由による解雇は「整理解雇」と呼ばれる。「このままでは経営が成り立たない」というような状況では一定数の労働者を解雇することはやむを得ないとも考えられるが、それは責任のない労働者に大きな犠牲を強いることになるから、可能な限り避けられるべきだ。そこで、合理的な理由のある解雇だといえるか否かは、

(1)人員削減の必要性
(2)解雇回避の努力
(3)人選の合理性
(4)手続きの妥当性

 といった判断基準に照らして厳格に判断される(整理解雇の4要件)。

 コロナによって経営に打撃を受けている場合、(1)人員削減の必要性が認められるケースが多いと思われるが、それでも(2)解雇回避努力義務を十分に尽くしていないような場合には解雇は無効だと判断される可能性が高い。政府は、事業主が一時的な休業等によって雇用維持を図った場合に休業手当や賃金の一部を助成する雇用調整助成金の特例措置を講じ、支給要件を緩和するなどしており、このような制度の利用を検討せずに解雇に踏み切った場合には、解雇回避の努力を十分に尽くしていないと判断されるだろう。新規採用の抑制や役員報酬の削減を行なっていない場合も同様だ。

 このように、単に新型コロナの影響で売上が下がったというだけでは解雇は認められない。裁判で争えば、解雇が無効だと判断される可能性があるし、法的に争う姿勢を示せば、会社が解雇を撤回することもある。納得がいかない場合は、労働組合や弁護士に相談するとよいだろう。