仮設病院に人工呼吸器を装着された重篤患者が
ロンドンのウォーターフロント再開発地区ドックランズのエクセル展覧会センターには、NHSナイチンゲール病院の4000床が急きょ設けられた。4月7日から人工呼吸器を装着された重篤患者が運び込まれている。
エクセルは東京ドーム2つが入る広さ(約10万平方メートル)。重篤患者に酸素を吸入する液体酸素タンクも外部に設置されている。4月中旬にはバーミンガムの展示会場5000床、マンチェスターの会議場1000床の準備も整う。臨時病院は他に2カ所設置する予定だ。
新型コロナウイルスの潜伏期間は最長で2週間。ウイルスの“巨大津波”は突然、目の前に現れる。英国全土に外出禁止令が出された3月23日にはすでに重症・重篤患者でNHS病院のICUは逼迫し始めていた。
ゴーグルで「鼻と頬が痛くて赤い」
ロンドンにあるロイヤル・ブロンプトン&ヘアフィールド病院の看護師マリア・リスカノ・ゴメスさんは外出禁止令が出る前日の3月22日、初めてのICU勤務が終わったあと、フェイスブックに「今日から13時間シフトが始まる。鼻と頬は本当に痛くて赤い」と書き込んだ。
投稿された自撮り写真の目の下や鼻筋にゴーグルの跡がくっきり残る。「同僚は私より長くICUにいた。 時間が経つにつれ、顔と手は乾いてかゆくなり、防護服と手袋に覆われていることに疲れを感じる。普段はこんな投稿はしないけど、状況は悪い。この現実を真剣に受け止めて」
「いずれ人工呼吸器やベッドが不足し、誰が生き、誰が死ぬかを選択しなければならなくなる。私にあなたの看護をさせないで。あなたができる、とても簡単なこと。家にいて。そして手を洗いなさい」。マリアさんはもともと回復室の看護師だが、ICUに駆り出された。
前夜は考えすぎて熟睡できなかった。怖かったからだ。この日がウイルスの“巨大津波”と対決する13時間シフトの初日。フェイスブックに訴えたい気持ちを書き込んだのは深夜の12時前。肉体も精神も、もう抜け殻のようになっていた。
3日目(24日)の投稿では「手と顔がとても痛い。とても暑い。私たちの努力にかかわらず、患者は一つも快方に向かっていない。フラストレーションが募る。祈るしかない。しかし、私たちはみな同じ船の上。お互い助け合って戦い続けよう」と自分を鼓舞している。
13時間もずっと防護具の中にいると汗だくになる。「回復していた患者が病室からいなくなる。ICUに移された」「最悪の状況が続くICUで患者と家族がウェブカメラを通じて話すことができた。自然と笑顔が浮かんでくる」とマリアさんは英大衆紙デーリー・ミラーに話している。