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「ウイルスを持って帰ってくるな」イギリスでは医療スタッフへ差別的な“虐待”が起きた

一方、毎週木曜には「Clap for Carers」運動が

2020/04/10

[ロンドン発]新型コロナウイルスの大流行で日本でも緊急事態宣言が発令された。感染爆発が起きる前に医療現場が機能不全に陥る恐れも十分にある。医師や看護師を守ることができなければ患者の命は救えない。どんな備えと支えが必要か。医療崩壊に瀕する欧州から報告する。

数十人が公の場で虐待された

 現在、英国では医療の最前線でウイルスと戦って帰宅したNHS(国民医療サービス)のスタッフにツバを吐きかけたり「病気のスプレッダー」と罵詈雑言を浴びせたりするケースが相次いでいる。近所の人から「ウイルスを持って帰ってくるな」「中国に帰れ」と嫌がらせを受けたスタッフもいる。

 NHSスタッフの中には移民も多く、数十人が公の場で虐待されたという。イングランド主任看護師のルース・メイ氏はNHSのスタッフにユニフォームやID(身分証明書)を身に着けて通勤しないよう指示するとともにこう呼びかけた。

「私たちの命を救うために通勤していることを知りながら危害を加えようとするなんて本当に恐ろしいことだ。断じて許せない。看護師も助産師のチームもみな一生懸命働いている。どうか温かく接して」

 こうした虐待はどうか少数であってほしい。英国の医療制度は原則無料、税金と国民保険料で運営されている。英国の誇りであり、市民の命を守る最後の砦である。

「医療従事者を拍手で激励しよう」

 毎週木曜日午後8時、“対ウイルス戦争”の最前線に立つNHSの医師や看護師、スタッフを激励するため、英国中の市民がバルコニーや窓、玄関から拍手と声援を送っている。そしてNHSを支えるボランティアに75万人以上が志願した。

「THANK YOU NHS」と書かれた掲示板 ©ロイター/AFLO

 ジョージ王子、シャーロット王女、ルイ王子の3人も可愛らしい拍手でチアアップする動画をツイッターに投稿。シーズン中断となったイングランド・プレミアリーグのリバプールのユルゲン・クロップ監督やイレブンも動画でNHSのスタッフに感謝の気持ちを伝えた。

拍手を送るジョージ王子、シャーロット王女、ルイ王子(ケンジントン宮殿の公式ツイッターより)

 NHSのスタッフを拍手で激励する運動は、ロンドンで暮らすオランダ人女性のアナマリー・プラスさんの「外出禁止になり、ご近所さんとも顔を合わせなくなった。みんなで安全距離を保ちながら一緒に外に出て医療従事者を励まそう」という呼びかけで瞬く間に広がった。