検査の結果は陽性。「正直ものすごくショックでした」
そこで同席した人物が陽性となり、少し日数を置いた時点で自らも悪寒や発熱の症状が出た。田嶋氏は16日、保健所に相談した。すぐにPCR検査ができるかどうかはわからなかった。ただ、ヨーロッパでの会議の様子や陽性者との接点などを細かに説明した結果、一度病院で診察を受けることになった。
現在多くの病院で行われる検査は、まずは血液検査で炎症反応の数値を確認することや、レントゲンで肺炎の症状の有無を診ること。ただレントゲンでは肺炎の見落としもあることから、より精緻なCT検査も追って行われることがある。田嶋氏は胸に聴診器を当てられた時点で、「肺炎かもしれない」と診断され、すぐにCT検査を実施。案の定、肺炎を発症していた。
「痰が出たり、咳き込むようなことはありませんでした。それに私はこれまでの人生で肺炎に罹ったことは一度もなかったんです。元々弱い箇所であればわかりますが、このウイルスの騒ぎの中で肺炎と言われた時は、正直、コロナ陽性だと思いました」
陽性者と濃厚接触した可能性があること、そして肺炎の診断。これらの条件から、PCR検査を受けることになった。そして結果は、陽性。
「告げられた時は、正直ものすごくショックでした。何より組織の長としての立場がありますし、自分が移動してきたところで感染を広めていないかどうか。会った方たちに迷惑がかからなければいいが……そればかりを心配していました」
幸い、その後田嶋氏との濃厚接触者からは発症者は出なかった。それでも、このウイルスの感染力の強さは以前から報じられていただけに、いざ陽性者になった瞬間の不安定な心情は察することができる。
「この薬が効かなかったら、あとはご自身の免疫力で戦うしかないです」
入院生活が始まった。初めに、田嶋氏は投薬に関する誓約書にサインをした。
「治療開始の際に、どんな薬を使用しても構わないというサインです。入ったのは感染症専門の病院でしたし、もちろん薬は治験もしているものでしょう。私にどんな薬が効くか、その時点で何もわからない状況でしたので、とにかくドクターにお任せしようという思いでした」
一日中、点滴を欠かすことなく、抗生物質などさまざまな内服薬も服用した。医者は毎日体の数値とデータを記録し、便と血液も採取。その変化に合わせて、複数の薬が試されていく。
治療中、さらにショックな出来事があった。
「ある時ドクターから『この薬が効かなかったら、あとはご自身の免疫力で戦うしかないです』と告げられました。このウイルスは重症化していくと本当に生命にまで影響が及んでしまう。その事実を突きつけられました。とても大丈夫だろうなんて気にはなれませんでした」