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《カレー、ロッキー、食事時間厳守》海上自衛隊に学ぶ「究極の在宅ストレス」管理術

潜水艦元艦長が指南する実践的「コロナ鬱」対策とは?

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食堂で『ロッキー』を鑑賞して気分転換

 私の艦長時代、乗員のストレスをコントロールするためにしていたことで、まず思い出すのは、彼らに「任務以外のことに頭を切り替える時間」を与えていたことです。

 閉鎖空間にいるからこそ、潜水艦内のことではない全く別のことに意識を向けさせる。緊張状態が長く続くと、自律神経にも悪影響を及ぼします。半ば強制的に「いま船のなかにいる」ということから頭を切り替える必要があるのです。

 そこで重宝したのが、映画鑑賞でした。出港前に基地に常備されているDVDを借りこみ、食堂で上映します。映画が始まると、任務が終わった乗員が次々に集まり、途中からでも同じ画面を見る。音を出してはいけませんから、全員がヘッドフォン姿。しーんと静まりかえった、ヘッドフォン姿の自衛官で埋め尽くされる薄暗い食堂……。想像すると異様な光景かも知れませんが、こうして映画の世界に没入します。

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潜水艦では映画もヘッドホンをして観なければならない ©️iStock.com

 私が勤務していた頃は『ロッキー』など、流行のハリウッド映画をよく見ました。涙腺の緩い私は、見終わった後につい感動して涙を流してしまいましたが、泣くとスッキリして効果的でした。

 ほかにも、私たちの頃はトランプを持ち込んでブラックジャックなどに興じていました。いまの乗員たちはゲーム機も持ち込んでいるようです。単に娯楽ということではなく、ストレスをコントロールするうえで、いつもと違うことに没頭する時間は非常に重要なのです。

『ロッキー』などのハリウッド映画に没頭してスッキリ ©getty

 ある研究で自殺の多い都市について調査したところ、その都市は「職住近接」が進んでいて「通勤がない」ことが大きなストレス要因となっていたそうです。これも映画鑑賞と同じ理屈でしょう。職場と住居との間で「切り替え」ができないと、ずっとひとつのことに意識が向けられて、ストレスのかかった状態が続いてしまう。在宅ワークが求められているいまだからこそ、大切な視点だと思います。