「いま組織を支えているのはシャブ(覚醒剤)だ。シャブは重要なシノギだ」
そう語るのは、6代目山口組系の2次団体で長年活動している古参幹部だ。
バブル崩壊後、表経済が「失われた20年、30年」と低迷を続ける中、暴力団業界は暴力団対策法(1992年)と暴力団排除条例(2011年までに全国整備)などで規制が強化された。シノギ(資金獲得活動)が厳しくなり、前編で紹介したように離脱者が増え続けているが、それでも約2万8200人の暴力団関係者が活動を続けている。
残された暴力団の組員たちが生き残りを賭けているのが、覚醒剤なのだ。
かつては“ご法度”だったシャブ
全国の警察が押収する覚醒剤は急激に増えている。「シャブは重要なシノギ」との証言を裏付けるように、2010~2015年は年間300~400キロで推移していた覚醒剤の押収量は、2016年に約1500キロと急増、以後2018年まで毎年のように1000キロ以上の押収が続いている。そして、2019年の年間の押収量は2293キロと警察庁の統計で過去最多となった。
これまで、暴力団業界の多くの組織では「シャブはご法度」とされていた。彼らに言わせれば「暴力団」という呼称は警察が勝手に押し付けた名称で、多くの組織は任侠団体を自認している。このため、社会を蝕んでいく覚醒剤に関与するのは「邪道なシノギ」であり、手を出さないことになっていたのだ。
しかし、現状の覚醒剤の蔓延は、暴力団の介在なしには考えられないと、暴力団業界を長年ウォッチしているベテラン警察庁幹部は指摘する。