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《カレー、ロッキー、食事時間厳守》海上自衛隊に学ぶ「究極の在宅ストレス」管理術

潜水艦元艦長が指南する実践的「コロナ鬱」対策とは?

note

充実した食事で生活リズムを作る

 ストレス対策において、もうひとつ大きなポイントだったのは「食事」です。

 新しく艦長に着任した際、下士官たちから真っ先に「料理長を替えてください!」と要望が上がったことがありました。なぜはじめの要望が料理長なのかと疑問に思いましたが、いざ人が替わってみると、それまで出来合だったハンバーグが手ごねに変わり、すべての食事が目に見えておいしくなった。艦内の空気はがらりと変わり、みんな生き生きとし始めたのがわかりました。

 冗談みたいな話ですが、食事は士気に直結する要因です。実際、潜水艦乗員の「糧食費」は海上自衛隊の他の隊より多く設定されています。それだけ、自衛隊のなかでも食事はストレスに大きく関わっていると理解されているのです。

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海上自衛隊呉史料館に展示される、潜水艦「あきしお」の食堂兼用の士官室(広島・呉市) ©️時事通信社

 潜水艦では、夜食も含めた1日4食が用意されています。特に、私の船では月曜日の夜はステーキでした。みんなこれが楽しみで、当日は朝からいつも以上の活気にあふれていました。

 こういうと、「良い物さえ食べればいいのか」と思われるかも知れませんが、時間も大切です。食事は気分を切り替えるメリハリにもなりますし、生活のリズムを作る上でも大きなきっかけになります。

 潜水艦では、6時間の3交代制でシフトを回しています。1日に6時間ずつ生活がずれるので、勤務次第では明け方に就寝する人もいます。しかし、朝のトーストにはじまり、昼、夜、夜食が絶対時間で規則正しく出る。人によっては寝る前にトーストを食べる人もいますが、食事が決まった時間で出るので、そこから自分なりにリズムを整えていくのです。

カレーが曜日感覚のリズムになる?(写真はイメージ) ©iStock.com

 余談ですが、海上自衛隊で食事の話をすると、「曜日がわからなくなるので、金曜日にカレーを食べている」という逸話を思い出す人もいるかもしれません。実は、あれは間違いです。

 土曜日が午前勤務だけの「半ドン」だったころ、乗員がすぐ帰宅できるように、土曜の昼食は1週間の残った具材を一気に煮込めて、後片付けも簡単なカレーにしていた。それが週休2日制になり金曜日にスライドした、というのが本当の理由です。