戦後72年。かの戦争体験の声が次第に聞けなくなっている今、証言者たちの“孫世代”の中に、声を拾い、研究を深め、表現をする人たちがいる。

 戦争から遠く離れて、今なぜ戦争を書くのか――。

 インタビューシリーズ第4回は弁護士で戦史研究家の清水政彦さん。2009年、30歳で著した『零式艦上戦闘機』は、従来語られてきた「零戦神話」を緻密な検証により覆し、話題の書となった。以降、零戦を中心とした航空機研究の視点から戦史をドライに分析し続ける清水さんに、なぜ「戦争」を書き続けるのかを伺った。

ADVERTISEMENT

清水政彦さん

飛行機が好きになったきっかけは、柔道整復師の先生がくれた『丸』

――戦史を研究するようになった入り口は、歴史方面からなんですか? それとも飛行機方面から?

清水 完全に飛行機好きだったからですね。私、もともと絵を描くのが好きで、画家になりたかったんですよ。子どもの頃、最初は電車、次に船っていうふうに画の題材を変えていって、飛行機にたどり着いた。『丸』に載ってる飛行機を夢中になって描いてました(笑)。

――ミリタリー雑誌の『丸』。小さい頃からそばにある雑誌だったんですか?

清水 近所に自衛隊出身の柔道整復師の先生が住んでいまして、そこによく通っていたのですが、先生がやたら私に『丸』をくれたんです。もらうとまあ、読むじゃないですか。すると図版のキャプション読んでるだけでどんどん基本的な軍事知識が頭に入ってくるんですよね。凝り性なもんですから、飛行機の外側の構造が分かると、今度は中身がどうなっているか知りたくなってきて。

――エンジンとか、仕組みがどうなってるとか……。

清水 そうです。で、メカニック分野の解説書を買ってきて自分で調べるわけです。ですから、この道に入った当初は歴史についてそれほど思い入れはなかったんです。完全にモノとしての飛行機に関心があった。

零戦 ©文藝春秋

個人的に一番綺麗だと思う飛行機はB-17です

――ただただ、カッコいいものとして好きだったと。

清水 零戦について言えば、今でこそ本も出しましたが、一番カッコいいとかそういう愛着があるわけでもないんですよ。零戦はデザイン的に古いものだし、綺麗さで言えば米軍機の方が上。個人的に一番綺麗だと思う飛行機はB-17です。

――周りに同好の士はいたんですか?

清水 別にいないですね。

――現在は金融法務を専門とする弁護士としても活躍されていますが、同僚にもいないですか、ミリタリー仲間は。

清水 いやいや、いないですよ。昔、『文藝春秋』で「零戦と戦艦大和」という座談会企画に参加させてもらったことがあるんですが、隣に座っていた評論家の福田和也さんとプラモの話をしたのは覚えていますけどね。「飛行機はハセガワのほうがいいです」とか(笑)。