じつは安倍政権の外交実績は“無得点”
「安倍(晋三)総理はいま、追い詰められています。徴用工問題を契機に『最悪』と言われるまでに悪化した日韓関係は修復の糸口も見えない状態です。日露交渉でも北方領土2島の先行返還や平和条約の締結といった成果を挙げることは、もはや夢物語。北朝鮮の拉致問題も拉致被害者の帰国どころか、無条件での日朝首脳会談についても無視され続けています。拉致被害者の有本恵子さん(拉致当時23歳)の母・嘉代子さんが2月に94歳で亡くなったことで、拉致被害者家族の心は安倍総理からどんどん離れています。
総理が恐れているのは、既に87歳となり最近は特に思わしくないと言われている横田めぐみさん(同13歳)の父・滋さんの体調です。めぐみさんのご両親は拉致被害者家族のシンボル的な存在です。もし万が一の事態となれば、もう総理は『拉致』を軽々に口にできなくなります」
そこに来て、さらに終わりの見えない新型コロナウイルスへの対応という大きな十字架を背負うこととなってしまったのだ。
「108兆円もの緊急経済対策を打ち出しても、目の前に迫る未曽有の不況の恐怖は拭えません。また、米中の橋渡し役を担うために中国の習近平国家主席を国賓として招く算段も、コロナ禍で延期を余儀なくされ、総理在職日数では歴代1位とはなりましたが、大好きな外交では“無得点”という最終結果が見えてきてしまってもいるのです」(同前)
生前退位で「憲法改正」も絶望的に
本当に来年、五輪が開催できるのかも危うい状況だ。そしてなんと言っても、安倍総理が政策の一丁目一番地としてきた憲法改正は、コロナ禍の前に在任中の実現は絶望的というのが衆目の一致するところだろう。「安倍一強」などと呼ばれるほどの長期政権となりながらも、憲法改正に向けたタイムスケジュールが一切動き出さなかったのは、なぜだったのだろうか。
「やはり、2016年7月に表面化した上皇陛下の生前退位のご意向が大きかったと言えるでしょう。7月13日にNHKがスクープしたこのニュースは、安倍政権の動きをガチガチに縛ることになりました。そして8月8日、自らのお言葉で陛下がお気持ちを表明されたことで、安倍政権は生前退位を実現させなければならないという重い課題を与えられました」(同前)
憲法で禁じられている天皇の政治的発言には当たらないという理論武装に始まり、生前退位を認めるための特措法の制定、皇室の新たな制度設計、生前退位の時期、元号の選定、そして一連の御代替わりの儀式と、解決すべき問題は山積みで、憲法改正に注力する余裕はなかったというのが実情なのだ。