「上皇・上皇后両陛下はともに転居の準備でお忙しくされてきましたし、引っ越し作業で皇居の吹上仙洞御所に出入りする運送スタッフらを通じて新型コロナウイルスに感染するリスクも避けなければならないので、御用邸などでゆっくりと休んでいただき、お荷物の運搬など作業の終了を待って、仮住まいの『仙洞仮御所』となる東京都港区の高輪皇族邸にお移りいただくことになります」
宮内庁関係者は、こう語る。上皇・上皇后両陛下は3月19日、約26年間にわたり親しんだ住まいに別れを告げ、神奈川県葉山町の葉山御用邸に入られた。栃木県の御料牧場を経て3月31日に高輪皇族邸に移られる。そして天皇ご一家と上皇・上皇后両陛下は今後、1年半ほどをかけてお住まいを入れ替わられる予定だ。
東宮御所は先帝の仙洞御所、吹上仙洞御所が天皇ための御所に
赤坂御用地にあった皇太子のための東宮御所はお代替わりに伴い天皇のための赤坂御所となり、皇居にあった御所はお代替わりに伴い、先帝のための吹上仙洞御所となったが、それぞれを改修して、前者が先帝の仙洞御所となり、後者が天皇のための御所となる。
「上皇・上皇后両陛下が高輪に移られた後、9カ月ほどかけて御所の改修を進め、天皇ご一家が皇居に移られてから、4カ月ほどかけて仙洞御所を改修する予定です。改修工事の終了を待って、上皇・上皇后両陛下が赤坂に移られれば、仮住まい生活は終了となるわけです。ちなみにご滞在中の葉山御用邸は1894(明治27)年に竣工しました。体の弱かった大正天皇の療養先として御用邸建設の地に葉山が選ばれたのは、ドイツ人医師で侍医でもあったエルヴィン・フォン・ベルツ氏による紹介があったといわれています。
葉山御用邸は現在の御用邸(本邸)のほかに、敷地内の南側に御用邸南邸があったほか、現在は葉山しおさい公園として整備された御用邸の北方の地に、御用邸附属邸がありました。この附属邸は大正天皇が晩年、病気療養に使用したもので、大正天皇崩御の地であり、上皇陛下の父・昭和天皇践祚(即位)の地としても知られています。また、現在の御用邸は1971年に放火被害に遭い、81年に再建されたものです」(同前)