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辻村深月と綿矢りさが全力で薦める「いま家で読むならこの本!」

休校中の小中高生に向けた“オススメ本対談”。その結果は?

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 お互いの子育てエピソードなどで意気投合した辻村さんと綿矢さん。小学生・中学生・高校生にそれぞれお薦めの小説を二人に紹介してもらった。

高校生向けには『IWGP』をお薦めします!

 高校生向けに辻村さんが推薦したのは、『池袋ウエストゲートパーク(IWGP)』(石田衣良/文藝春秋)だ。

『IWGP』は2000年に放映されたドラマで親しんでいたという綿矢さん。辻村さんはGボーイズのキング・タカシの魅力について熱く語り……。

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辻村 高校生向けには『IWGP』をお薦めします! 7月からアニメも始まりますね。

綿矢 そうなんですね! 私、IWGPはドラマしか見てないので、原作を読んでみようと思います。

綿矢りささん ©文藝春秋

辻村 原作は、親しい誰かに話しかけるような疾走感のある文章が衝撃的なんです。読んでいた当時は池袋のカラーギャングのような人たちとは縁遠い青春だったにもかかわらず、彼らが私を仲間にしてくれたように感じていました。

綿矢 それは読んでみたい!

辻村 私、大学に入りたての頃は、「タカシと結婚したい!」って思ってました。

綿矢 ドラマで窪塚洋介が演じていた、Gボーイズのキングですね。どこが良かったんですか?

辻村 タカシと結婚したら権力がもらえるんだなって思ったから。タカシの妻としてギャングたちに敬われたい気持ちがあったんです(笑)。

アナログの街の景色を塗り替えていく文章

綿矢 『池袋ウエストゲートパーク』っていうタイトルもかっこいい。“池袋西口公園”って言われんのやったら全然雰囲気が違う。

池袋ウエストゲートパーク』(シリーズ第1作目)

辻村 石田さんの文章には、アナログの街の景色を、おしゃれに塗り替えていく力があるんです。作中で、道路に吐き捨てられたガムが張り付いた様子を、黒い水玉のように表現していたんです。誰でも見たことのある汚れた景色なのに、朝のさわやかな光が想起させられました。

綿矢 描写の力で汚い部分を再構築して、読ませるものに変化させるんですね。すごい読みたくなりました。

出典:「文藝春秋」5月号

 綿矢さんが文章に「耽美」を初めて感じた有名冒険小説、辻村さんが自分も中学時代に読みたかったというライトノベルなど、二人が薦めた12冊は、「文藝春秋」5月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されている(「小中高生に全力で薦める「極上の12冊」)。

 休校、外出自粛はストレスかもしれないが、長い時間を子どもと過ごせる機会と前向きに捉えて、一緒に読書の時間を持ってみてはどうだろうか。

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