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韓国は物質主義的な価値観が偏重されている

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 エド・ディナー教授は、「幸せを得るためにはどうすべきなのか」という幸福学の今までの定番テーマを、「幸せを得るとどこがどう変わるのか」という側面から研究し、幸福学の研究領域を一気に広げた人でもあります。

 氏は、「個人が感じる幸福こそが、疾病管理、生産性、創造性など国家の各分野で上昇を目指している指標に肯定的な影響を与える」とし、国家は個人が幸せを感じ取ることができるよう、政策を進めるべきだと主張している人でもあります。

 そのエド・ディナー教授が、2010年8月、韓国心理学会がソウルで開催した国際シンポジウムで、『韓国での不幸』(Unhappiness in South Korea)という題で講演しました。

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 2010年8月17日の『東亜日報』、2013年2月8日の『中央日報』の記事から講演の内容をまとめてみると、氏は韓国社会に対してこう主張しています。

「韓国人は、他の社会構成員たちと自分自身を絶えず比較し、勝つことが幸せになる道だと信じている」

「しかし、いつも勝者になることはできない。他人と物質的な面だけ比べ続けても、幸せを感じられなくなるだけだ」

「韓国人は過度に物質中心的で、社会的関係の質が低い」

「物質主義な価値観それ自体を一方的に悪いと言うつもりはないが、社会的な他人との関係や個人の心理的安定など、他の価値を犠牲にしているから問題だ」

『東亜日報』は氏の指摘した「他人との関係」は信頼関係のことで、「個人の心理的安定」は趣味を介して得られる幸せだと書いています。趣味については後述しますので、ここでは信頼関係を見てみましょう。

5人に1人が「信頼できる人がいない」と答えた韓国の劣悪な人間関係

 韓国人の社会関係の「質」が低いとしてエド・ディナー教授が提示したデータの中で特に興味深いのが、「信頼できる(頼れる)人がいるのか」です。OECD(経済協力開発機構)も「Perceived social network support」として同じ趣旨のデータを集計しているので、それをベースにしたものだと思われます。

 私も2013年11月に「韓国が不信社会である、ある種の証拠」としてこのデータをブログで紹介したことがあります。自分に困ったことが起きた場合、助けを求めることができる人(自分にとって信頼できる人)がいるのかを調べた結果、韓国人は78%が「いる」と答えました。

 一見、高い数値に見えますが、実は違います。このデータの「頼れる人」の範囲には、家族も含まれます。家族、友、知り合い、すべての人たちを含めて、困った時に頼れる人を持たないという人が、22%もいるわけです。

 これは世界的に見ても最悪クラスとなります。エド・ディナー教授が講演したシンポジウム当時、経済難や急激な通貨価値の下落などで、ネットではジンバブエが散々バカにされていました。

 エド・ディナー教授はそれを意識してか、ジンバブエのデータも公開しましたが、ジンバブエの人たちは82%が「信頼できる人がいる」と答えました。米国が96%、日本が93%。80%を下回る国は、そうないとのことです。OECDの2013年データでは、韓国よりこの数字が低いのは、メキシコとトルコだけでした。

 エド・ディナー教授は、「約5人に1人の韓国人が、『頼れる』と言えるほどの人間関係を築くことができないでいます。他人を信頼する、他人と力を合わせるなど、社会での『資本』ともいえる人間関係が、とても劣悪なのです」と指摘しました。