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 1994年7月、金日成が死亡した時には、韓国側の“弔問”をめぐり、南北関係は最悪の事態を迎えた。当時の金泳三大統領は金日成主席の死亡を、韓国国内におけるいわゆる「主体思想派のあぶり出し」の契機にしようとした。その結果、大々的な公安政局を作りだしたため、南北関係は回復できない状況にまで追い込まれた。

韓国大統領府のコメントはどう読み取ればいいのか?

 金泳三政権は当時、ビル・クリントン米国大統領が金日成の死亡に哀悼の意を示したことについても不快感を隠さなかった。こうした韓国政府に対して、北朝鮮は「常識以下の不遜と無礼」「大犯罪」などの表現で猛烈に非難した。その後も南北関係は良好に向かわず、北朝鮮の朝鮮中央通信は金泳三政権末期の1998年1月、「金泳三政権は最も凶悪な統一の敵」と非難し、南北関係は「史上最悪」と評価した。

©AFLO

 文大統領は、当時のこのような出来事を強烈に記憶しているであろう。こうした経緯と現政権の方針を踏まえると、文大統領は金正恩が死亡した際も北朝鮮の歓心を買うことに異常なほどの努力をすることは容易に想像がつく。

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 韓国大統領府の報道官は4月21日、CNNの報道を受け「確認できる内容はなく、現在まで北朝鮮内部に特異な動向も捉えられていない」とコメントしたが、このコメントの背景には、こうした文大統領の意向があると言っても問題ないであろう。韓国大統領府の発表は、金正恩の病状と合わせて、引き続き注視していきたいと思う。

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