米CNNは現地時間4月20日、「米情報当局が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が重体という情報を監視中」と、情報当局者の言葉を引用して伝えた。
金正恩の体型などから見て、心臓疾患であることは首肯できる。しかし、筆者は入院治療の理由から新型コロナウイルス感染の可能性も未だ排除できないのではないかと考えている。北朝鮮は「新型コロナ感染者は出ていない」と公式表明。その立場上、外部に流す情報を「心血管系の手術」としている可能性も否定できないからだ。
ちなみに、金正恩の祖父にあたる金日成が急死した時は、34時間(約1日半)後にその死が発表された。一方、父親の金正日が死亡した時は、51時間(2日以上)あまりもかかっていた。なぜか。金正日の死亡当時、後継者である金正恩への権力移譲がしっかりできていなかったからである。後継体制の準備状態から言えば、万一、金正恩が死亡していた場合には、今回はさらに遅れる可能性があるだろう。
「植物状態」か「判断能力がある」のか
金正恩の生存状況については情報が少ないため、現時点で確かなことは言えない。だが、関係各国は金正恩の病状について、あらゆる手段を活用して情報収集に注力している。
情報収集の重点は以下の通りである。
金正恩の容態:「生存・回復」できるか「死亡」か。「生存」の場合は「植物状態」か「判断能力・統治能力がある」か(寝たきりであろうと車いすであろうと)
後継の行方:妹の金与正か、他の血縁か(叔父・金平一や兄・金正哲など)
軍の動向:後継者候補と連動した争いは起こらないか、クーデターの可能性はないか
「金委員長が重体」説に対応する関係各国の動向:特に米中は相互の動きを牽制
“北朝鮮の帝王”の心臓外科手術について、新型コロナウイルスで世界が大混乱に陥っている中、医師団と医療施設などが万全に整っていたかどうかは疑問が残る。また、仮に治療に中国、フランス、ロシアなどの医師が関わっていれば、今後、金正恩の消息について確度の高い情報が得られるだろう。
万が一、金正恩が死亡した場合、北東アジア情勢はどうなるだろうか。特に「従北」の態度を貫いてきた韓国の文在寅政権にとっては、大きな方向転換を迫られることになる。「金正恩死亡シナリオ」における文在寅政権の動きをシミュレーションしてみよう。