文春オンライン

「金正恩は脳死に準ずる深刻な状態」韓国で出回った“怪文書”の中身

2020/04/22

青瓦台の発表は「異例中の異例」

 冒頭の米CNNの報道後、韓国の通信ニュース、聯合ニュースは、政府当局者の話として「北朝鮮に特異な動向はない」と報道。続いて、青瓦台(大統領府)も異例の素早さで反応した。青瓦台は、「現在まで北朝鮮内部に得意な動向は識別されていない」と米CNNの報道を否定したが、夕方近くに再度、「実は地方にいる」と発表した。別の記者は言う。 

「2度も発表するなんて異例中の異例です。しかも、金委員長の動向情報は極秘情報のひとつで、こちらのインテリジェンスを公開することになり、本来は確認できていても公表しない、言ってはならない情報。さらに言えば、この発表は金正恩の怒りを買う行為でもある」 

 韓国の国家情報院は、3次元分析プログラムを使って金委員長の健康状態などを分析しているといわれる(京郷新聞、2018年11月2日)。これは、金委員長の動画をプログラムに組み込み、体型を立体的にスキャンし、分析する方法で、「金委員長が2012年初めて公の場に登場したときは(体重が)90kg、2014年度には120kg、最近(2018年11月)は130kgと推定される」(同前)としていた。 

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軍迫撃砲部隊の訓練を視察する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(4月10日に朝鮮中央通信が公開) ©️時事通信社

 文在寅政権に入り、南北首脳会談は3回行われ、食事なども共にしているが、そうした場でも”情報戦”が行われていると前出記者は言う。 

「金委員長が触れた物はすべてまとめて生態情報を残さないよう、北朝鮮が回収し破棄しているとされていますが、韓国は健康状態がわかるようなものを逃さず分析していると見られています」 

 また、昨年6月30日に南北国境の板門店で電撃的に金委員長と握手を交わしたトランプ大統領が米メディアに「金委員長が肺気腫患者のようにぜえぜえという息をしていた」(米FOXニュース)と話すなど、金委員長の健康悪化説は以前から燻っていた。 

 では、青瓦台が自ら極秘扱い情報を公表してまで「金委員長重体説」報道の火消しに走ったのはなぜか。 

 ちょうど冒頭の米CNN報道が出る前日に、民族平和統一諮問会議主催で、2018年4月27日に行われた南北首脳会談を記念した鼎談があった。そこで、韓国の北朝鮮専門家(進歩系)として名高い研究者の一人は、「南北で保健医療での協力について話し合う南北首脳会談を開くべき」と強調していた。前出記者は言う。