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「いいものもある、だけど悪いものもある」

YMOの3人(1980年撮影) ©時事通信社

 スネークマンショーも、それからまもなくしてTBSラジオの番組が打ち切られてしまう(1980年6月13日)。以前からその過激な内容に、局やスポンサーの小学館サイドは眉をひそめていたが、「写楽祭」の失敗を受けて、打ち切りを決めたらしい(※3)。これと前後して6月5日には、YMOがスネークマンショーとコラボしたアルバム『増殖』がリリースされる。同作は当初、10万枚の限定プレスの予定が、予約の段階でその倍の注文が集まり、限定は解除となる(※1)。「写楽祭」での観客の反応を思えば意外にも、『増殖』はYMOファンに好評をもって受け入れられ、盤中のコントで繰り返される「いいものもある、だけど悪いものもある」などは流行語になった。スネークマンショーのメンバーだった伊武雅刀は後年、《YMOもスネークマンショーも、メンバーの背景と経歴と性格がバラバラで、それがうまく融合されていたからああいうオリジナルの存在感が出たんでしょう。似たもの同士が集まってもおもしろくない。そういう意味ではどちらも奇跡のようなコラボレーションでした》と、自分たちとYMOに共通点を見出している(※5)。ちなみに伊武は、細野と顔や低い声が似ているので、当時よく間違われたという。

『ひょうきん族』にもチャレンジしたYMO

 YMOの笑いへのアプローチは『増殖』以降も続いた。1982年には当時の人気バラエティ『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)にゲスト出演したかと思えば、異色コンビ・ユニットが競演した『THE MANZAI CARNIVAL』(同上)では「トリオ・ザ・テクノ」を名乗って、3人がそれぞれモノマネを披露した。1983年、解散ならぬ“散開”を前にリリースしたアルバム『サーヴィス』では、曲のあいまに三宅裕司主宰の劇団「スーパー・エキセントリック・シアター」とコントを演じている。時代は下り、2001年と2019年には、NHKのBSのバラエティショー『イエロー・マジック・ショー』で3人が再結集。昨年12月には、その舞台版が細野の音楽活動50周年の記念イベントとして催され、メンバーが星野源や宮沢りえ、ジョイマンらとコントやギャグを披露している(ニューヨーク在住の坂本は映像のみの出演)。

 なお、坂本龍一は「写楽祭」から約1週間後の1980年5月1日、YMOのワールドツアーのサポートメンバーでもあった矢野顕子とのあいだに女児が誕生した。この女の子こそ、のちにミュージシャンとなる坂本美雨である。

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1983年12月のYMOの散開コンサートを素材として製作された映画『プロパガンダ』の制作発表にのぞむ3人(1984年撮影) ©共同通信社

※1 吉村栄一編『コンパクトYMO』(徳間書店、1998年)
※2 GORO特別編集『OMIYAGE』(小学館、1981年)
※3 桑原茂一2監修『これ、なんですか? スネークマンショー』(吉村栄一構成・執筆、新潮社、2003年)
※4 細野晴臣・坂本龍一・高橋幸宏『イエローマジックオーケストラ』(田中雄二文・インタビュー、アスペクト、2007年)
※5 「結成40周年スペシャル YMOは永遠に」(『週刊文春』2019年8月29日号)

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