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「8時だョ!全員集合」(TBS系)から幾つもの人気番組を経て、最後の出演となった「志村でナイト」(フジテレビ系)まで46年間、コント一筋で生きて来た志村が語った“コントへのこだわり”をげそ太郎氏は聞いている。

2014年、舞台「志村魂~一姫二太郎三かぼちゃ~」の公開稽古前に取材に応じる前列左から池田夏希、磯山さやか、志村けん、いしのようこ、みひろ、後列左からダチョウ倶楽部の寺門ジモン、肥後克広、上島竜兵、桑野信義

「100点のコントは10本のうち1本か2本でいい」

「志村さんは1時間のコント番組の中で、『すべてが100点のコントは出さない』と、お話をしてくれました。『コントが10本あるとしたら、100点はその中に1本か2本でいい。10本の中には60点のコントも番組に出さないといけない。すべて100点だと、コントを見終わった人の印象が50点になってしまう。

 いろんなバリエーションの違うコントを散りばめることで90点のコントが際立つ。だから俺は、そこのバランスはいつも気にしているんだ』と。志村さんは、コント番組全体のバランスや緻密な計算があるのだと驚かされました」

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 志村のコントは細かい台本はなく、簡単な打ち合わせのみで出演者は極度の緊張感に包まれる。げそ太郎氏もコントの大役を任され緊張していたが、唯一、志村から褒められたことが今でも忘れられないと語る。

「志村さんと優香さんが貧しい家の親子という設定のコントでした。なけなしのお金で買ったおでんのたまごを道路に落としてしまい、それを自転車で通りかかった僕が踏むというのがコントのオチでした。

「お前、よかったな」

優香 ©時事通信社

 志村さんは本番のリアクションを重視するので、ほとんどがリハーサルなしの一発勝負。たまごは滑るし、真ん中を踏まないと潰れない。失敗したらそこまで積み上げた志村さんたちのコントが撮り直しになってしまうので、緊張しかありませんでした。本番では、なんとか志村さんたちが落としたたまごの真ん中を踏むことができてオチが完成して、コントは無事に終わりました。めったに身内を褒めたりしない志村さんが笑いながら『お前、よかったな(笑)』って言ってくれて、初めてコントで褒められて、心の底からうれしかったです」