「お前が俺にそんなこと聞くんじゃない」
「あるとき、志村さんのやさしさでスタッフさんたちとの飲みの場に同席させてもらったことがありました。話題がコントやお笑いの話になったときに、僕は志村さんのドリフ時代に憧れていたので、思わず、『志村さんのドリフのときはどうだったんですか?』と聞いてしまったんです。すると機嫌のよかった志村さんの顔から笑顔が消えて、『お前が俺にそんなこと聞くんじゃない。お前は俺に“こういうことが今、流行っていますよ”とか、“こういう物が今、人気ですよ”とかを言わなきゃダメなんだ』と注意されました。それからは車の後部座席に『これ最近、若い子の間で流行っている曲みたいです』と、CDを置いたりしておくと志村さんは黙って聴いていました」
飲んだ次の日にはアセロラドリンクのはずが
それ以来、げそ太郎氏は二度と師匠に質問することはなかった。弟子となって日々、師匠への気配りをしていたが、空回りすることも多々あったと話す。
「泥酔した志村さんを車で自宅へ送迎しているときに、志村さんが『飲んだ次の日に車の後ろにアセロラドリンクとか置いてあるとうれしいんだよなぁ』と小さな声で呟いたんです。いつも志村さんが好んで飲んでいたのはミネラルウォーターだったので、それを聞いた翌日に水をやめてアセロラドリンクを何本か置いて自宅に迎えに行ったら、『オレは水がいいんだよ』って怒られてしまい、本人は酔っていて前日のことを覚えてなかったんでしょうね(笑)」
「オイ、お前ふざけてんのか! なんだその髪は!」
げそ太郎氏は、7年間の弟子生活の中で志村を激怒させたことが2度ある。1度目は前回記事の「ファミレスで4時間怒られた」事件。2度目は楽屋でのことだった。
「僕が27歳くらいのときに勘違いをして、髪の一部分を緑色に染めたことがあったんです。その緑の髪で志村さんを自宅まで迎えに行き、運転中は何事もなく、いつも通りテレビ局に着いて楽屋に入った途端、志村さんの表情が豹変したんです。『オイ、お前ふざけてんのか! なんだその髪は! その緑色の髪をしてサラリーマンや通行人の役ができるか? そんなヤツいないだろ。お前はどの役をやるつもりなんだ。自分がコントに出るときに、そんなリアリティのない髪色していてふざけてないか。黒く染め直してこい!』と、怒鳴られ、僕も『すみません』と何度も謝り、その日に髪を黒く染め直しました。本当に何も考えていない若気の至りでした」