4月16日、国家公務員の定年を60歳から65歳に引き上げる国家公務員法改正案が衆院本会議で審議入りした。これとあわせて、検察官の定年を63歳から65歳に引き上げる検察庁法改正案も審議される。
安倍内閣はこれに先立つ1月31日、まだ二つの法改正が行われていないにもかかわらず、2月7日に63歳で退官予定だった東京高検検事長の黒川弘務氏の定年延長を閣議決定した。安倍晋三首相の肝いりとみられる異例の人事には、どんな背景があるのだろうか。
官邸が描いたシナリオ
東京高検の黒川弘務検事長は2月8日の誕生日をもって、63歳の定年を迎える予定だった。東京高検の検事長といえば、次期検事総長をほぼ手中に収めたといえる待機ポスト。このポストの人事は検察内の幹部人事にも大きな影響を与えるため、通常、ひと月前の年初にはその内示がある。ところが、松の内が明ける1月7日の初閣議前になっても、その動きが見られなかった。
検察内部でさまざまな憶測が行き交うなか、黒川検事長の誕生日が日一日と迫り、このまま定年を迎えるとみる向きが増えていった。ところが1月31日、検察関係者はこの日の閣議決定に仰天することになる。
黒川氏の半年間の勤務延長だった。退官するはずだった黒川氏は、この決定により8月7日まで東京高検検事長として勤務を続けることになった。この間の7月には、稲田伸夫検事総長が任期の2年を迎えるため、慣例通りなら黒川検事総長が誕生する。この異例中の異例ともいえる人事に安倍首相の強い意向があることは誰の目にも明らかだった。