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「保育を拒否される」「タクシーから乗車拒否される」

 物資も人員も不足している現場で、最大限の働きを求められている医療従事者たちには、体力的にも、精神的にも大きな負担がかかっている。その悲痛な訴えは、個人のSNSなどでも発信されており、なかには過酷な労働実態だけでなく、日常生活においても差別を受けているという声も多い。

 今回の日本看護協会が提出した要望書にも、感染するからという理由で「保育を拒否される」「タクシーから乗車拒否される」など、いわれなき誹謗中傷に遭ったという事例が挙げられている。

※写真はイメージです ©iStock.com

「他にも、看護職自身に向けられた嫌悪や差別としては、馴染みの飲食店などから『看護師は来店しないで欲しい』と言われたケースがありました。また、同じマンションの住人から『あなたが看護師であることは内緒にしておくからね』と言われたという声も寄せられています。看護職の家族に向けられた差別や偏見もあり、感染症病床で勤務していることが夫の会社に知られ、夫が勤務先より休むように言われたなどの事例がありました」

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「危険手当」の支給を一般病棟などにも

 このような状況に追い込まれている看護職に対するせめてもの救済案として浮上したのが「危険手当」の支給だ。とはいえ、看護職への「危険手当」という制度は従来からあるものなのだろうか。

「国家公務員の俸給規定では、感染症病棟で患者の看護を行った場合、1日290円という規定があり、今般のダイヤモンド・プリンセス号の内部作業については、これが、1日4000円に増額されたと承知しています。しかし、国家公務員以外、このような手当があるかどうかは本会では把握していません」

ダイヤモンド・プリンセス号 ©iStock.com

 今回の要望書では、「新型コロナウイルスに感染した患者又は感染した疑いのある患者に対応した看護職及びその補助を行った看護職」に、危険手当の支給を求めている。

「対応する患者さんのどなたが新型コロナウイルスに感染しているのかわからない状況であり、どんな場所で働く看護職にも感染のリスクがあると考えられることから、支給の対象範囲を感染症病棟に限定せず、一般の病棟等に広げることが必要です。さらにまたこのような状況が長期間にわたって継続することも考えられることから、支給対象期間としては新型コロナウイルスの蔓延がほぼ終息するまでとすることを要望しています」

 危険手当の具体的な金額については「本会のほうからは、看護職に手渡してほしい金額を具体的には要望していません」とのことで、まずは金額よりも、制度の整備と支給の確約を求めている。