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 BLは女性たちが紡ぎ、育ててきた文化です。そしてBL研究者の堀あきこさんや溝口彰子さんの論考、あるいは昨年出版された『BLが開く扉』で論じられているとおり、近年のBLにはホモフォビック(同性愛嫌悪的)な現実社会を変えていけるような、可能性の光が見られます。その光はタイのBL実写ドラマにも確かに宿っており、それが作品をさらに輝かせているように私には思えるのです。

 小説やマンガ以上に多くの受け手に開かれたメディアであるTVやYouTubeを通じて配信される分、その影響力はより一層の広がりを持つかもしれません。女性同士の恋愛や、あるいは他者に恋愛感情や性的な気持ちを抱かない人もふくめ、さまざまなマイノリティを尊重することにも繋がってほしいと願っています。

「2gether The Series」は伏線の張り方がとにかく素晴らしい

 もちろん、社会を変える可能性といった難しいことを考えなくても、タイBLは素晴らしいひと時を私たち視聴者にもたらしてくれます。まずは現在放映中の2gether The Seriesを第1話からご覧いただき、5月中旬の最終回をリアルタイムで観てほしいと思います。

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主演俳優・Brightが歌う「2gether The Series」テーマソングMVの1シーン(YouTubeより)

 この作品は特に伏線の張られ方が見事で、毎週新しいエピソードが流れるたびに「あああ、あれ伏線だったのか……!」と以前のエピソードを再視聴することとなり、そこで新たな感動に震えているうちにあっという間に次の週が訪れます。公式配信されるメイキング映像(Behind The Scenes)や、もちろん他の作品に手を出すこともできます。

 気づくとあなたはサラワットとタインのことを、あるいはコングポップとアーティット先輩のことを、あるいは個性溢れる脇役陣のことを、考えるようになっているはずです。

 外に遊びに行けなくてもタイBLの世界を訪れれば、ちょっと他では得られない種類の潤いで心を満たすことができます。今年のGWは私たちと一緒に、タイ沼で過ごしませんか。

本稿で紹介した作品
・2gether The Series 第1話(公式YouTube・全編無料)
・SOTUS The Series 第1話(公式YouTube・全編無料)
・ラブ・バイ・チャンス/Love By Chanceは日本版DVDボックス販売中。アジアドラマチックTV、Amazonプライムなどでも視聴可能。


*1 「おっさんずラブより熱い? タイのBLドラマ爆発的人気」『朝日新聞』デジタル版2019年12月20日 
*2 カン=グエン・ビュンジュ・ドレッジ著、佐藤まな訳「ゲイ「ファン」の「ファン」:想像と存在のはざまから立ち上がるタイのボーイズラブ」ジェームズ・ウェルカー編著『BLが開く扉:変容するアジアのセクシュアリティとジェンダー』2019年、青土社、p.208