日本版DVDも発売されたLove By Chanceでは主役のエーがおくてなため、同室のポンドがピートとのキューピッド役を務めます。自信を持てないピートを励ます、チャエイムという女性の存在もとても魅力的です。SOTUS The Seriesのシーズン2は、まさにこの「受容と変容の物語」がメインテーマとなり、感動的なクライマックスに繋がります(詳しく書けないのが残念です。ぜひ本編をご覧ください)。
社会に残る同性愛への差別や偏見について触れながらも、周囲の登場人物たちが男性同士の恋を見守り、応援し、祝福する。それだけではなく、周囲の人びともまた、2人の恋愛を見守るプロセスを通じて、少しずつ変化していくのです。
YouTubeを通して世界中のファンが主人公たちを応援することに感動
私たち日本の――そして多くの国の――ゲイ男性にとって、「自分たちの恋愛を応援してくれる人」は、とても心強い存在です。
恋愛は、2人の閉じられた関係とは限りません。自分たちの関係を認め、話を聞いてくれる周りの人びとの存在が必要な場合も多くあります。しかし同性愛への偏見が残る社会では、男女間の恋愛なら当たり前にできるようなこと――友達に相談したり、愚痴を言ったり、のろけたり――ができないケースも少なくないのです。相手が同性であるというだけで周囲から承認されない寂しさ、つらさを、タイBLは優しく癒してくれます。
2人の恋を応援するのは劇中人物ばかりではありません。TVと公式YouTubeを通じて2人の恋は世界の人びとに見守られ、応援され、祝福されます。2gether The Seriesの最新話がYouTubeで配信された日は、各国の言葉で2人の恋をことほぐツイートが溢れます。これはマンガや小説とは異なり、全世界でほぼ同時に視聴し、感想を述べることができるというメディアの特性による現象でもあります。
私はタイBLファンのゲイ男性として、この「受容の物語」に参加すると同時に、世界中の人びとが男性同士の恋愛を応援する様子に励まされます。フィクションの中だけではなく現実世界でも、いつか私たちゲイ男性の恋を、たくさんの人が当たり前のように見守り、応援し、祝福してくれる日が来るのではないか。私たちの世代のゲイ男性が若かった時代には難しかったことが、次の世代の人たちにはできるのではないか。そんな風に社会が変容していく可能性を、そこに見るのです。
BLとゲイ男性の架け橋に
日本では、ゲイ男性の立場から「BLはゲイ差別ではないか」という問題提起がなされるなど、BLとゲイ男性が緊張関係に置かれることもあります。逆に、BLを愛読し、BLに励まされているゲイ男性も少なくありません(この辺りの詳細は7月に有斐閣より刊行予定の『BLの教科書』所収の拙稿「ゲイ男性はBLをどう読んできたか」をご覧ください)。
タイにおいてもBLとゲイ男性の関係は時に敵対することがあるものの、本質としては両者は対話的であり、BL人気がタイ社会における「現実上の同性愛に対する寛容性の向上に貢献している」という指摘もあります(*2) 。