前出、コミック「鬼滅の刃」は、取材したどの書店、取次でも突出して売れているといった評価だ。コロナ禍の以前からブームになっており、「アニメが始まってから、3冊、4冊とまとめ買いする人が増えた」(トーハン)と、今まで19冊が刊行されているが、新刊を重ねるごとに既刊も売れるのが強みだ。
通常はどんなに人気のシリーズであっても最新刊しか売れないが、その点でも「鬼滅の刃」の売れ方は特異である。
4月21日付日販とトーハン調べで、両社とも週間ベストセラー・コミック(コミックス)ランキング7位~10位に、「鬼滅の刃」が連続でランクインしている。
1週前の4月14日付では、両社ともに3位から10位までを「鬼滅の刃」が占めるすさまじさであった。
ちなみに、両社とも4月21日付コミックの1位は「名探偵コナン(98)」、2位は「進撃の巨人(31)」、3位は「五等分の花嫁(14)特装版」だった。
また、「鬼滅の刃」は小説も2冊が刊行されており、トーハン週間ベストセラー・総合ランキングの2位に「鬼滅の刃 片羽の蝶」、3位に「鬼滅の刃 しあわせの花」がランクインしている。これらは、日販の総合ランキングでも3位と4位であった。メディアミックスで人気が爆発している。
「ペスト」「首都感染」……“感染症本”がベストセラーに
コロナ禍で売れるようになった本に、感染症に関する本があり、名作小説の新潮文庫、アルベール・カミュ作「ペスト」が、TSUTAYAの販売本・コミック週間総合ランキング(4月13~19日)7位に入った。
また、高嶋哲夫が10年前に今日を予言したとされる小説「首都感染」が日販の文庫9位に浮上した。
丸善書店ランキング4月21日付週間4~6位に入った、岩波新書の山本太郎著「感染症と文明」と村上陽一郎著「ペスト大流行」、ベスト新書の岩田健太郎著「新型コロナウイルスの真実」なども注目が集まっている。
売れ筋の「学参・ドリル」 なかでもヒット本は……
また、学参では、教科を問わず小学校、中学校、高校の復習用ドリルが売れ筋となっている。安倍晋三首相の要請により、3学期の途中の3月初めから休校になったためだ。
小学生用で笑い楽しみながら学べるという「うんこドリル」シリーズ、算数の考える力を育てる「天才ドリル」シリーズなど、従来とは異なったアプローチの学習ドリルが開発されてきているのも、追い風となった要因である。
児童書は、母親が子供に読み聞かせるために買っていく傾向が強い。ミヒャエル・エンデの「モモ」、ガネットの「エルマーのぼうけん」のようなロングセラーをはじめ、昨年の日販年間総合トップ20以内に3冊も送り込んだ「おしりたんてい」シリーズ、同20位「だるまさんが」などの童話、絵本が動いている。
こういった、学参や児童書が売れる傾向は、感染者が少なく3月に休校をあまり実施していなかった地域でも共通で、山陰を基盤とする今井書店でも、同様の傾向がみられた。同社では「報道に煽られて買われている面があるのかもしれない」としている。
巣ごもりで売れている「料理本」とは?
巣ごもりにより、家で料理する人が増えているため、料理本も注目される。