日々、おびただしい数流れてくる新型コロナウイルスのニュースに辟易している人も多いのではないだろうか。戦後最大の経済危機を迎える中、「コロナ後」にどの職業が“残る”のか、不安を覚えている人もいるだろう。

「マツコロイド」などのアンドロイドで知られ、ロボット研究の世界的権威である石黒浩さん(大阪大学大学院教授)は、「文藝春秋」5月号(現在、「文藝春秋 電子版」にも掲載中)の対談で「これからの職業」について、非常に示唆的なことを語っている。聞き手は、「news zero」でキャスターを務める有働由美子さん。

 対談は、新型コロナウイルスが猛威をふるう“前”に行われた。今回、その対談から、「機械に置き換えられない仕事」と「これから学ぶべきこと」について語っていただいた部分を特別に抜粋して紹介する。

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©文藝春秋

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学生時代に40種類以上のアルバイトをやった

有働 先生は、学生時代にコックや塾講師、富士山の山小屋、ぶどうの収穫など、実に40種類以上のアルバイトをやったそうですが、その中で今後、機械に置き換えられないような仕事はありますか。

石黒 大体のことはいつか機械でできるようになるでしょうね。僕が一番できなかったのは営業だけど、ロボットだったら出来ると思います。僕らが開発した接客を担うアンドロイド「U」が、昨年12月から大阪の「エキスポシティ」のフードコートで実証実験を行っています。好みに合わせ、お薦めのメニューを提案してくれるロボットです。

有働 先生は、どうして営業が苦手だったんですか?

石黒 普段通り真っ黒な恰好で、アメリカンバイクに乗って営業していたら、誰も家に入れてくれなかったんですよ。

有働 学生時代から真っ黒だったんですか。そんな人が家に来たらちょっとコワい(笑)。

有働由美子さん ©文藝春秋

石黒 結局、1週間で辞めました。一番頭を使ったアルバイトは、塾経営です。子どもに「今日は勉強と遊び、どっちがいい?」と、その日に何をするか選ばせて、遊びと答えたら、一緒に経営していた仲間が相手をする。勉強を選んだら僕が教える。親御さんからは「勉強嫌いの子どもが塾に行きたがるのはおかしい」って怪しまれました(笑)。でも成績は上がりましたし、子どもからの評判は良かったですよ。

機械に仕事が奪われるのではなく……

有働 今後技術開発が進むと、AIに仕事を奪われる人が続出するという指摘があります。それまで人間がやっていた仕事をAIが担うようになっていくと、社会はどのように変わっていくのでしょうか。

石黒 僕は機械に仕事が奪われるというより、今まで機械的な単純労働をやっていた人が、人と向き合う仕事に就くようになるのではないかと思います。例えば、精神科医やカウンセラー、介護士。そしてホスピタリティーが求められるような仕事の需要が増えていく。有働さんのようなアナウンサーも例外ではなくて、ニュースを読む以上に、コメントや対話がより重要になっていくのではないでしょうか。